研究課題/領域番号 |
18K06367
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
榊原 恵子 立教大学, 理学部, 准教授 (90590000)
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研究分担者 |
関本 弘之 日本女子大学, 理学部, 教授 (20281652)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 進化 / 転写因子 / 陸上植物 / KNOX遺伝子 / ストレプト藻類 |
研究実績の概要 |
陸上植物はその生活環の中で単相と複相の両方に多細胞体制を構築する世代交代を行うが、これは陸上植物の進化の初期に獲得された新規形質である。研究代表者は陸上植物ヒメツリガネゴケを用いて世代交代を制御するホメオボックス型転写因子KNOX2遺伝子を報告した。近年、陸上植物に近縁であるが世代交代を行なわないストレプト藻類Klebsormidium nitensとシャジクモのゲノムが報告されたが、これらのゲノム中にKNOX2遺伝子が存在することから、KNOX2遺伝子とその姉妹遺伝子であるKNOX1遺伝子はストレプト植物の共通祖先にすでに存在したことがわかった。一方、ヒメツリガネゴケ以外の陸上植物にもKNOX2遺伝子は存在するが、これらのKNOX2遺伝子がそれぞれの植物種で世代交代を制御しているかは不明であった。 本年度はストレプト藻類及び他の陸上植物のKNOX2遺伝子とヒメツリガネゴケKNOX2遺伝子の機能の保存性を調べるために、ヒメツリガネゴケKNOX2遺伝子変異体に、ストレプト藻類であるヒメミカヅキモ、あるいは他の陸上植物のKNOX2遺伝子を導入した際の表現型を調べることで検証することとし、形質転換体の作製と確認を完了した。ヒメミカヅキモKNOX2遺伝子の機能解析のため、ヒメミカヅキモKNOX2遺伝子に変異を誘導するプラスミドを作製し、ヒメミカヅキモへ導入した。 これまで、他のコケ植物、セン類、タイ類のゲノムは報告されていたが、ツノゴケでは未報告であった。本年度、ツノゴケ Anthoceros agrestisのゲノムを解読したところ、ツノゴケゲノム中にはストレプト植物で保存されているKNOX2遺伝子の姉妹遺伝子であるKNOX1遺伝子が欠失していた。また、シャジクモのKNOX2遺伝子の機能解析のため、形質転換体系の確立を試み、パーティクルガンによる遺伝子導入に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ストレプト藻類のKNOX2遺伝子の機能解析のため、ヒメミカヅキモKNOX2遺伝子変異体の単離を試み、複数の候補株を得たが、KNOX2遺伝子座位を調べたところ、いずれも変異が導入されていなかった。他の遺伝子座位の変異体作製でも同様の結果が得られ、形質転換に用いた株が変異の導入されにくい株であった可能性が考えられた。本年度中にヒメミカヅキモ KNOX2遺伝子変異体の単離を完了する予定であったため、研究に遅れが生じていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに作製したストレプト藻類および他の陸上植物のKNOX2遺伝子をヒメツリガネゴケKNOX2遺伝子変異体に導入した形質転換体を観察し、他の植物のKNOX2遺伝子でヒメツリガネゴケKNOX2遺伝子変異体を相補できるかを調べる。 また、ヒメミカヅキモKNOX2遺伝子の機能解析のために、株を変更して変異体単離を実施する予定である。 昨年度までにツノゴケAnthoceros agrestisの形質転換系を確立し、現在、投稿論文を準備中である。この系を使ってツノゴケのKNOX2遺伝子の機能解析を進める。 また、シャジクモの形質転換系の確立の糸口が見出されたので、これをさらに進め、シャジクモKNOX2遺伝子の機能解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒメミカヅキモKNOX2変異体が単離できなかったため、変異体の解析に必要な研究費を来年度に持ち越したため。
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