研究課題/領域番号 |
18K06372
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
横山 ちひろ 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (90264754)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | パーソナリティ / 非ヒト霊長類 / fMRI / PET |
研究実績の概要 |
個人を特徴づける持続的で一貫した行動傾向は、性格(パーソナリティ)と呼ばれ、ヒトの健康や主観的幸福感に関係している。近年パーソナリティ研究は、脳機能イメージングという実験的研究方法を取り込むことで、そのメカニズムに迫りつつある。このような行動傾向の多様性はヒト以外の動物界にも広く認められる。本研究の目的は、パーソナリティという個体の行動特性の多様性を、生理機構である脳機能(神経伝達物質効率、機能的連結)に還元し、ヒトとヒトに近縁の動物種との比較によりその進化的意義について考察することである。そのために最新の脳機能メージング技術をヒトおよび小型霊長類の一種コモンマーモセットに適用し、種間相違を明らかにする。 本年度は、50頭のコモンマーモセットを用いて、ヒトのパーソナリティおよび社会行動や意思決定を制御するとされているセロトニンおよびドーパミン神経系を標的にしたPET画像、高解像度の脳構造および安静時機能MRI画像を取得した。また、77頭のコモンマーモセットを用いて、飼育者の評価する質問紙評定法による性格評定を行い、探索的因子分析によって、優越的、社交的、神経質というパーソナリティ3因子を抽出した。同個体群から、ヒトにおいて社会性に係ることが知られている神経伝達物質受容体の遺伝子多型(バソプレシン1a受容体およびミューオピオイド受容体)、ストレス指標となる体毛コルチゾール濃度を調査し、性格因子との関連性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コモンマーモセットのパーソナリティ判定に関しては、ヒトに類似の遺伝子多型やストレス指標との関連性を見出し、論文発表に至った。脳画像に関しては、構造および機能MRI画像、セロトニントランスポーターおよびドーパミンD2受容体の特異的PETトレーサーを用いたPET画像を、それぞれ50頭分取得した。しかしヒト脳画像処理パイプラインのマーモセットへの適用化に最適と考えられる条件において、個々のデータチェックとマニュアル修正が必要であることが判明し、これに時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
コモンマーモセットの構造脳画像を、ヒト脳画像処理パイプラインに適用したところ、マーモセットへの適用化に最適と考えられる条件においても、個々のデータについてチェックと修正が必要であることが判明した。そのため当初の計画より時間を要しているが、これは今後のマルチモーダル画像処理の最適化と効率化に必要な作業である。正確な構造脳画像データを確定したのち、安静時MRIによるコネクトーム抽出、PETによる神経伝達物質効率の皮質マッピングを行い、マーモセット脳マルチモーダル画像データベースを構築する方針である。その後脳画像統計により、パーソナリティ特性の発現に係る脳神経回路、神経伝達物質の伝達効率が関与する脳部位を特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コモンマーモセットへの脳画像処理パイプライン適用化に時間を要しているため、次年度分請求額に加えて、安静時MRIによるコネクトーム抽出、PETによる神経伝達物質効率の皮質マッピングなどの脳画像解析に必要な予算、その他情報交換や研究成果発信のための旅費、英文校正費などが次年度に必要である。
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