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2019 年度 実施状況報告書

植食性昆虫が進化に至る、最初の変化は何か

研究課題

研究課題/領域番号 18K06374
研究機関株式会社生命誌研究館

研究代表者

尾崎 克久  株式会社生命誌研究館, その他部局等, 研究員 (60396223)

研究分担者 小寺 正明  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (90643669) [辞退]
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードアゲハチョウ / 味覚受容体 / 産卵刺激物質 / ミヤマカラスアゲハ / クロアゲハ / RNAi / 電気生理実験
研究実績の概要

前年までに、トランスクリプトーム解析によりクロアゲハとミヤマカラスアゲハの前脚で発現する遺伝子を解析し、味覚受容体遺伝子の候補を検出している。そのうちの一つが二種間で高い相同性を示した事から、共通に認識される化合物であるフェラムリン受容体である可能性が示唆された。
今年度は、味覚受容体遺伝子の機能を明らかにするため、雌成虫前脚ふ節の化学感覚子に電極で刺激を行うチップレコーディング法による電気生理実験に取り組んだ。ミヤマカラスアゲハは産卵刺激物質が未解明であるのに対し、クロアゲハは生の葉と同等の産卵行動が観察される植物化合物が解明されているので、クロアゲハを用いて産卵刺激物質に対する応答を調べた。
ナミアゲハの場合(Ryuda et al, 2013)と同様に、各化合物に対応する三種類の細胞が応答していることが確認された。ミヤマカラスアゲハに対しては産卵刺激物質、クロアゲハに対しては忌避物質として作用するフェラムリンで刺激をおこなった場合も、両種の前脚で神経細胞の応答が観察された。
今後、フェラムリンに応答する神経細胞が、産卵刺激物質に応答する神経細胞と同じものなのか否か確認する。また、RNAiによって味覚受容体遺伝子の発現を抑制した場合に、電気生理学的応答が低下するか否かを確認し、リガンドの特定を試みる。同様に、味覚受容体遺伝子の発現を抑制した個体の産卵行動を観察し、フェラムリンの受容体が忌避行動に関与するのか明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初カルシウムイメージング法で機能解析を行う予定であったが、より生体内での働きに近い状態でリガンドを同定することを目指し、電気生理実験による機能解析に取り組んだ。ナミアゲハでは、チップレコーディング法による電気生理実験により、雌成虫前脚感覚子に存在し電圧が異なる、三種類の神経細胞が産卵刺激物質に応答していることが明らかになっている(Ryuda et al, 2013)。
ミヤマカラスアゲハは産卵刺激物質が未解明であるが、クロアゲハに関しては生の葉と同等の産卵行動が観察される植物化合物が明らかにされている(Honda, 1990)ので、クロアゲハを用いて味覚神経の応答を観察した。チップレコーディング法によって観察される電圧は細胞によって異なり、便宜上「高電圧」「中電圧」「低電圧」の三種類に分類している。観察される電圧が異なるという事は、刺激によって活動した細胞が異なっているという事を意味している。クロアゲハでもナミアゲハと同様に、特定の植物化合物は特定の電圧の細胞を刺激していることが観察された。
ミカン科植物キハダに含まれるフェラムリンは、ミヤマカラスアゲハに対しては産卵刺激物質、クロアゲハに対しては忌避物質として作用していることが知られている(Honda et al, 2011)が、チップレコーディングでは両種で応答が観察された。
今後、RNAiによって味覚受容体遺伝子の発現を抑制することで応答の変化を観察し、リガンドの解明を目指す。

今後の研究の推進方策

これまでの取り組みにより、ミヤマカラスアゲハとクロアゲハの二種から、産卵行動に関与すると期待される味覚受容体遺伝子の候補を検出している。また、各植物化合物が、雌成虫前脚感覚子の特定の感覚神経細胞を刺激していることが明らかになった。
今後はRNAiによって味覚受容体候補遺伝子の発現を抑制し、フェラムリンに対する電気生理学的応答が変化することを確認し、味覚受容体の機能を同定する。また、同様にRNAiをおこなったクロアゲハ雌個体を用いて産卵行動実験を行い、フェラムリン受容体が産卵の選好性に関与していることを確認する。
並行してミヤマカラスアゲハとクロアゲハのゲノム解読を進め、フェラムリン受容体遺伝子のプロモーター領域の推定と比較を行い、発現制御の仕組み解明を試みる。

次年度使用額が生じた理由

昆虫の味覚受容体遺伝子は発現量が極めて少ないため、当初は複数回のRNA-seqが必要なるものと想定していたが、インサート長が長いライブラリーを作成し、Illumina MiSeqを用いた300bpペアエンドのシークエンシングを行い、k~merサイズを最適化したアセンブリングによって高精度なトランスクリプトーム解析が可能となる工夫を行なったことにより、小数回のシークエンシングで候補遺伝子の検出に成功した。
また、ミヤマカラスアゲハを採集するために、北海道への長期出張を計画していたが、昆虫専門のネットオークションで購入するという工夫を行なったことにより、旅費の使用を抑制することができた。
これらの金額は、ゲノム解読のためのロングリードシークエンシングと、高出力シークエンシングの委託に使用する計画である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] アゲハチョウの食草が変わった時、最初に何が起きているのだろう?2019

    • 著者名/発表者名
      尾崎克久・宇賀神篤・龍田勝輔・吉川寛
    • 学会等名
      日本進化学会第21回大会
  • [備考] チョウが食草を見分けるしくみを探る

    • URL

      https://www.brh.co.jp/research/lab01/

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公開日: 2021-01-27  

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