チップレコーディング法による電気生理実験を行い、クロアゲハの前脚感覚毛でフェラムリンによる刺激に対する応答が確認されたことから、候補となる受容体遺伝子のRNAiによる機能阻害を行う予定であった。この実験には多数の雌成虫が必要となるが、COVID-19感染者増加による緊急事態宣言に伴い、約2ヶ月半の完全在宅勤務期間があり、その期間はクロアゲハを休眠させて低温条件で保存していたが、活動再開後に加温しても羽化率が悪化し採卵が困難となった。野外からの採集を試みたが、飼育個体と合計しても十分な個体数の確保には至らなかった。 電気生理実験と産卵行動実験は困難であったため、得られた少数の個体からゲノムDNA抽出を行い、次世代型シークエンサーを用いたゲノム解読を試みた。Illumina 社製シークエンサーのショートリードと Oxford Nanopore 社製シークエンサーのロングリードを合わせたハイブリッドアセンプリーに取り組んだ。Nanopre 社製の試薬キット類の納品が大幅に遅れたため、Illumina 社製シークエンサーのショートリードのみを用いたアセンブリーを先行して行った。N50が約70Kbpとショートリードのみの結果としては良好であったが、プロモーター等の発現制御に関わる領域の解析には不十分な長さであった。 Nanopore 社製シークエンサーを用いたロングリードの追加は、二度目の緊急事態宣言の影響を受けて予定より遅れたが、平均長120Kbpの良好な結果が得られた。このリードを用いてハイブリッドアセンブリーに取り組んでいる。
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