研究課題/領域番号 |
18K06376
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小藤 累美子 金沢大学, 生命理工学系, 助教 (40324066)
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研究分担者 |
山田 敏弘 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70392537)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 系統進化 / 陸上植物 / コケ植物 / 生殖器官 / 発生過程 / ツノゴケ |
研究実績の概要 |
本研究は、コケ植物に共通する造精器・造卵器の形質および発生遺伝子を探索することを目的としてしており、昨年度に引き続き、ツノゴケに焦点をあてて解析を進め、以下の結果を得た。 1. 2020年に発表されたモデルツノゴケAnthoceros agrestisの全ゲノム配列とRNA-seq data(Li et al. 2020)を用いて、ゼニゴケで雌雄の生殖器官形成に働くことがわかっておりシロイヌナズナで関連した機能を持つ7遺伝子について、ツノゴケでのオーソログ探索と遺伝子発現の有無を調べた。その結果、3つのMyb遺伝子以外はオーソログを見いだすことができ、いずれも発芽後2週間の葉状体(造精器を含むと考えられる)、4週間の葉状体(成熟した造精器と発生途中の多数の造卵器を含むと考えられる)の双方で発現しており、4週間のサンプルでは発現レベルが5倍以上上昇していた。 2. Anthoceros agrestisは雄性先熟で、同じノッチ状メリステムから、最初は造精器を形成し、その後連続的に造卵器を形成する。発生初期の造精器と造卵器を分けてサンプリングするために、発生過程の詳細な解析とタイムコースの把握を行なった。昨年度安定して胞子体および胞子を得ることのできる培養条件が確立できたことから、胞子発芽後、いつどこで精器形成が始まるか、どのくらいのタイミングで造卵器形成へと以降するのかを解析した。その結果、ノッチ状メリステムが発達する以前に造精器形成が開始されること、ノッチ状メリステムの背面メロファイトでは常に生殖器官形成が見られることがわかった。さらに培養条件の検討により、造精器のみを形成する期間をある程度延ばすことができるようになった。これにより、発生初期の造精器のみを含む領域と、発生初期の造卵器のみを含む領域を別々に採取可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
RNA-seqの準備段階で、用いる系を葉状体細片からの再生系から胞子を用いた発生に切り替えてAnthoceros agrestisの発生過程とタイムコースについての知見を蓄積し、また培養条件の検討によって、発生初期の造精器と造卵器を分けてサンプリングする目処が立ったものの、予定していたRNA-seqの実施に至らなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在までの成果を踏まえ、発生初期の造精器と造卵器を分けてサンプリングしてRNA-seqを行う。発現する遺伝子の種類と組み合わせ、造精器と造卵器の双方で発現するものと一方でのみ発現するもの解析し、ヒメツリガネゴケ、ゼニゴケのRNA-seq dataとあわせて比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はcovid19対応の授業の準備等に大幅に時間を取られ、研究に十分な時間をかけることができず、当初予定していたRNA-seqの実施に至らなかった。2021年度は7月にライブラリーの作成を行い、出来次第次世代シークエンサーを用いた解析を行う予定で、そのための消耗品を購入する。
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