研究課題/領域番号 |
18K06378
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岸田 拓士 京都大学, 野生動物研究センター, 特定助教 (40527892)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 種分化 / 遺伝子浸透 / 集団ゲノミクス |
研究実績の概要 |
本年度は、米国ノースカロライナ州沿岸においてコマッコウ類の死亡漂着が少なく、コマッコウに関してサンプル採集が思うように進まなかった。このため、不測の事態に備えて予備の研究として計画していたウミヘビ類の種分化に関する研究を行った。いわゆるウミヘビ類は二つの互いに独立な単系統群―胎生ウミヘビ類および卵生ウミヘビ類(エラブウミヘビ類)―の二つに分けられる。これら2つのグループは、どちらもおよそ800-1200万年前に海へと進出したが、その種多様性は大きく違う。胎生ウミヘビ類が16属60種以上に分類されている一方で、エラブウミヘビ類はわずか1属8種しか記載されていない。陸地のような明瞭な地理的隔離の存在しない大洋において、どのような要因が種分化を促進し、あるいは抑制するのか。本研究では、ほとんど種分化しないエラブウミヘビ類に関して、複数の種・個体をサンプリングしてゲノム全長を解読し、集団ゲノミクス解析を行った。その結果、同所的に生息する異種間の遺伝子浸透が非常に顕著であり、種間の十分な生殖隔離が存在しないことが解明された。こうした交雑の起こりやすさが、種の多様化が進まない要因の一つと推測された。本研究結果は、論文にまとめて投稿中である。一方で、胎生ウミヘビ類は同所的に生息する複数の近縁な種間で交雑がほとんど見られないことが、これまでに報告されている。こうした交雑の起こりやすさや起こりにくさは、どのような原因によるのだろうか。染色体数の分化などが影響している可能性がある。染色体などの観察は、次年度の課題とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究材料として期待していたコマッコウに関しては入手が難しかったため、ウミヘビを材料に用いた研究を遂行した。研究材料には変更があったが、研究目的そのものは当初の研究計画と同じであり、ほぼ当初の計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、再度コマッコウの入手に注力するとともに、現在遂行中のウミヘビを材料とした種分化研究をさらに発展させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、米国東海岸におけるコマッコウの死亡漂着が少なく、このためサンプル処理のために現地に行く必要が無かった。このため、当該旅費分が未使用となった。2019年度に再度サンプリングに挑戦する予定である。
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備考 |
国際共同研究先の研究機関が本共同研究に関して下記の通りウェブ記事を公開した。 https://www.neomed.edu/news/kyoto-university-professor-visits-neomed/
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