研究実績の概要 |
コバイモ節(コバイモ類)Fritillaria sect. Japonicaは、ユリ科バイモ属の多年生草本で日本固有種のみから構成される春植物(スプリング・エフェメラル)である。昨年度、葉緑体11領域(atpB-rbcL, atpF-H, petApsbJ, psbA-trnH, rpl16, rps16, rpoB, rpoC1, trnL-F, trnS-G, trnG)の塩基配列を解析しコバイモ節全種を用いた分子系統樹を構築したことで、コバイモ節に2つの系統(染色体基本数がX=11とX=12の系統)が存在し、それぞれの系統に分かれた後に3タイプの花形(筒形、広鐘形、傘形)が分化したことが明確になった。さらに、今まで雑種の可能性が示唆されたことのない種の中に単系統とならないものが複数見つかった。 今年度は、核2領域(ITS, ETS)の塩基配列解析による系統樹を構築した。また、よりゲノムワイドな解析を行うためにMIG-seq法で解析を行い、x=11の4種とx=12の6種のネットワーク図を作成し、structure解析を行った。その結果、種間・集団間の類縁関係が概ね明らかになった。また、分類学上の問題、つまりランクの変更(たとえば種から変種への変更)が必要と考えられる分類群や、雑種性が否定された分類群が明確になった。 今年度は、訪花昆虫の本格的な調査も開始し、同時にコバイモ節数種の開花フェノロジーの調査も行った。
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