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2019 年度 実施状況報告書

カオジロショウジョウバエをメスのみにする2種類の細胞質因子とその機構の比較解析

研究課題

研究課題/領域番号 18K06383
研究機関山口大学

研究代表者

和多田 正義  山口大学, 大学院創成科学研究科, 学術研究員 (00210881)

研究分担者 陰山 大輔  国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (60401212)
澤村 京一  筑波大学, 生命環境系, 准教授 (90247205)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードショウジョウバエ / オス殺し / ウイルス / ボルバキア
研究実績の概要

本年度も昨年に続いて長野県菅平高原でヤマカオジロショウジョウハエの採集を行なった。野外採集個体のDNAを調査したところ、ボルバキアの遺伝子を検出することができた。この遺伝子の解析から長野県のボルバキアは北海道の系統のボルバキアとかなり異なっていることが明らかになった。
今までの研究でメス化の原因であるPartitivirusに感染したヤマカオジロショウジョウバエの磨砕液を0.22μmの滅菌フィルターに通したものを非感染のヤマカオジロショウジョウバエ成虫に注射すると、次世代以降で全てメスになることが判明した(Kageyama et al., 2017)。インジェクション実験の際に時折、4つのうち一部のセグメント(MKV1~4)が抜け落ちる場合があることが明らかになった。セグメントMKV1が存在するときのみ性比が全てメスになっていたので、MKV1と全メス化との因果関係が疑われた。この遺伝子をUASPベクターに組み込んだコンストラクトをキイロショウジョウバエの胚にトランスフェクションし、系統化を行った。このUASP-MKV1系統の2系統(F6, M1)のオスをactin-Gal4系統のメスとかけ合わせたところ、次世代のうち、UASPとactin-Gal4を持つ個体のみが強くメスに偏った。さらに、MKV2, MKV3, MKV4に含まれるORFについてもそれぞれ同様にコンストラクトを作成し、UASP系統を作成した。しかし、これらのオスをactin-Gal4系統のメスとかけ合わせた結果は性比を歪めることはなかった。すなわち、MKV1に含まれるORFがオス殺し遺伝子として機能していることが証明された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

長野県の菅平高原でおこなったヤマカオジロショウジョウハエの採集結果では採集個体は多くなかったものの、全メス系統を1系統検出することはできたが、系統化することはできなかった。しかし、野外採集個体のDNAを調査したところ、ボルバキアの遺伝子を検出することができた。この遺伝子の解析から長野県のボルバキアは北海道の系統のボルバキアとかなり異なっていることが明らかになった。
トランスクリプトーム解析(RNA-seq)によって、ヤマカオジロショウジョウハエの非細菌性全メス現象の原因として疑われたPartitivirusの4種類の転写産物(MKV1~4)は、細胞内で共局在していることが明らかとなった。また、RACEにより4種類の転写産物の末端配列を解読したところ、3‘末端に相同性の高い部分が存在していたことから、これらはすべて1種類のPartitivirusが持つ分節でことが示唆された。インジェクション実験によって、4つのうち一部のセグメント(MKV1~4)が抜け落ちる場合があることが明らかになった。セグメントMKV1が存在するときのみ性比が全てメスになっていたので、この遺伝子をキイロショウジョウバエにおいて強制発現させることにした。UASPベクターに組み込んだコンストラクトを作成し、その遺伝子発現を調査した。その結果、MKV1遺伝子はキイロショウジョウバエのオスを殺すことが強く示唆された。さらに、MKV2, MKV3, MKV4に含まれるORFについてもそれぞれ同様にコンストラクトを作成し、UASP系統を作成した。しかし、これらのオスをactin-Gal4系統のメスとかけ合わせた結果は性比を歪めることはなかった。すなわち、MKV1に含まれるORFがオス殺し遺伝子として機能していることが証明された。

今後の研究の推進方策

長野県のボルバキアは北海道の系統のボルバキアと遺伝的にかなり異なっていることが明らかになった。しかし、今回は長野県のボルバキア感染系統は系統を確立することができなかった。長野県の系統は遺伝的に独自の系統であることから長野県のボルバキア感染系統が全雌系統かどうか、もう一度長野県で採集して系統を確立し、全雌系統かどうか確認する計画である。
2019年度に同定することができたオス殺し遺伝子MKV1がタンパクとして機能しているのかどうかを調べるため、1塩基欠失によるフレームシフト変異UASP-MKV1系統を作出する。この系統をactin-Gal4によってドライブすることにより、オス殺しが起きるのかどうかを観察する。もしオス殺しが起きるなら、オス殺しはタンパクが原因ではなくnon-coding RNAなどが原因であると考えられる。またオス殺し系統では孵化率が約50%になることから、オスの死亡は胚期に起きると考えられる。胚発生ステージのどの時期にオスの発生がストップするのかを、Sxlの抗体を用いてメス卵を特定することによって観察する。

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公開日: 2021-01-27  

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