研究課題/領域番号 |
18K06387
|
研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
瀧下 清貴 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (90392951)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 原生生物 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き,和白干潟においてアサリ12個体を採取し,それらの鰓組織からゲノムDNAを抽出した。抽出したDNAを鋳型として原生生物の18S rRNA遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCRを行った。PCR増幅産物はクローニングおよびシークエンシングに供し,さらに得られた塩基配列は相同性検索および系統解析に供した。解析の結果,全個体からPerkinsus由来の遺伝子配列が検出され,その高い感染率が確認された。また,PerkinsusについてはITS-rDNA領域における解析も行い,その結果,感染している種は全てPerkinsus olseniであることが示された。Perkinsus以外に,繊毛虫3種に由来する遺伝子配列が検出され,系統解析の結果,それらは寄生性の種である可能性が示唆された。繊毛虫3種のうち,2種はTrichodinaとAncistrumに属し,もう1種は未知の系統群に含まれた。その未知の系統群は全て二枚貝や巻貝等の軟体動物から得られたクローン配列から構成されていたため,当該グループは軟体動物に特異的に寄生する繊毛虫類である可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
寄生性真核微生物に関しては,昨年度に引き続き,干潟の代表的な底生動物であるアサリを調査対象とした。昨年度と同様にアサリから高頻度でPerkinsusが検出されたが,それ以外に新たに繊毛虫類3種を検出することができ,アサリに寄生する原生生物の多様性は予想以上に高いことが示唆された。今回の結果は,国内産アサリの減少の原因を考える際の重要なデータとなり得る。
|
今後の研究の推進方策 |
水産重要種であるアサリを対象として解析を行ったが,その個体数は12とN数が圧倒的に少ない状況にある。したがって,様々なタイミングで,より多くのアサリ個体を採取し,同様の寄生性真核微生物検出実験を行う。また,アサリ以外の干潟底生動物(具体的にはウミニナやホソウミニナ等の巻貝)の寄生性真核微生物検出も行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2018年度末の大量に購入した分子生物学実験のための消耗品で全てをまかなうことができたため,2019年度は支出の必要がほとんどなかった。2020年度はアサリやウミニナ等に寄生する原生生物の多様性を詳細に把握するため,予定よりも多くのシークエンシング反応を行う予定である。
|