研究課題/領域番号 |
18K06388
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
山田 晋之介 国際医療福祉大学, 医学部, 助手 (30772123)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 節足動物 / 貝形虫 / 外骨格 / 背甲 / 超微細構造 |
研究実績の概要 |
初年度は、実験場所である大学キャンパス周辺での野外調査の結果から、試料採集および個体飼育を容易に行える種の選定を行うと同時に、これまで蓄積してきたSEMデータの取りまとめと、TEM観察への環境整備に主に費やした。また、背甲の解剖学的データが著しく欠如しているウミホタル類について、蓄積データの取りまとめとデータの裏付け作業を行い、本分類群における背甲の解剖学的論文を執筆し、国際学術誌に受理された。 野外調査では、大学キャンパス周辺の水田からPodocopa目の一種Heterocypris incongruensを採集し、1年以上に渡る長期間の累代飼育に成功した。本種は淡水性種だが、海産種は千葉県金谷海岸の干潟に生息するPodocopa目数種を選定するつもりであり、すでに採集場所の情報は蓄積してある。Myodocopa目に関しては、千葉県館山でウミホタルVargula hilgendorfiiが採集可能であることを確認している。これまでの大顎歯列のSEMデータを取りまとめ、次年度に行うTEM観察のポイントを整理する過程で、ウミホタル類の背甲の解剖学的データに着目する機会を得た。そこで、これまでに観察・文献で取得したデータを論文として投稿し、今年度末に形態学の専門誌Journal of Morphologyに受理された。この研究成果は、今後に行う予定である貝形虫類の筋-骨格系の考察の際に、引用すべき重要な知見となる。 現在、既存の電子顕微鏡による観察データの取得と並行して、研究機関へ新規に納入されたEDS装置付きの電子顕微鏡の研究環境の整備を行っており、次年度の初めには本格的な運用ができるよう調整している。今後は、観察対象の形態学データだけでなく、化学組成データの取得も可能となるため、さらなる研究成果が見込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Podocopa目の主要分類群における大顎歯列に関するSEMのデータは、ほぼ取得を完了した状況にある。Myodocopa目については、次年度からSEMデータの取得を予定しており、現段階では標本の採集地点に関する情報収集を行っている。次年度以降は、これらの貝形虫類の標本を用いて、TEMによる神経ユニットの観察行っていく予定であり、その実験環境(試料・設備)も現在整いつつある。また、神経細胞の三次元的な分布データを得るために、今年度に引き続いて急速凍結によるレプリカ法を試みて、その手法の確立に尽力する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度から、大顎底節内の神経細胞の種類と配置を、TEM観察を行って明らかにしていく。十分な標本数とSEMデータが確保されているHeterocypris incongruensを中心に、Podocopa目の大顎底節における外部形態と内部神経ユニットの関連を探っていく。同時に、神経細胞の三次元的配置を観察できるよう、急速凍結によるレプリカ法の最適化も行っていく。TEM観察によるデータ取得条件を確立できたところで、Podocopa目の海産種やMyodocopa目にも観察範囲を広げていくつもりである。また、所属機関にEDS装置の付属したSEM・TEMが設置されたため、EDSによる大顎歯列の化学組成分析も行う予定である。これにより、大顎歯列に関する議論を外部形態データのみでなく化学組成データも絡め、より精度の高いレベルで行うことができる。次年度の終わりまでには、ここまでに述べたデータの取得はある程度の段階で目途を付け、研究成果の一部を関連学会(日本動物分類学会・日本古生物学会・日本節足動物発生学会)で発表した後、論文として国際学術誌に投稿する。そして、最終年度に本格的に取り掛かる「大顎筋-骨格系の三次元再構築像作成」のために、選定分類群における連続切片法の条件設定を完了しておく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、購入予定だったダイヤモンドナイフの代わりに、データ整理や画像処理に用いるためのラップトップPCを購入したので、ナイフに関してはTEM観察が本格化する次年度へと購入を延期した。組織切片観察では、特に大型のMyodocopa目の切片作成の過程で、当初の計画通り刃幅の大きなダイヤモンドナイフが必要となる。今後、三次元再構築像を作成するためのアプリケーションも購入するため、このソフトの購入費用との折り合いをつけて、最適な規格品を購入するつもりである。
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