研究実績の概要 |
近縁種間の雑種という観点から、性システムと種ゲノム進化におけるトランスポゾンの寄与を分子的に証明することを目的として、最終年目である2020年度は、以下の解析を行った。 1.性システム:性決定遺伝子dm-Wは、2倍体ツメガエル(Xenopus)属近縁2種の異種交配により異質4倍体化した祖先において、新性決定システムのために異種交配後に誕生した新機能獲得型の性決定遺伝子である (Dev Biol 2017)。dm-Wは4つのエクソンからなり、exons 2, 3はdmrt1 遺伝子の部分重複によって誕生していることがわかっていたが(PNAS 2008)、exons 1, 4の起源は明らかでなかった。進化学的解析の結果、両エクソン共に、dmrt1遺伝子由来でなく、exon 4はDNAトランスポゾン由来であることがわかった。更に、アミノ酸コード領域に相当しないトランスポゾン配列が、exon 4のアミノ酸コード領域に分子進化してきたことがわかった。 2. 種ゲノム進化:A. 異質4倍体ツメガエル:異質4倍体2種(X. laevisとX. borealis)のゲノム配列を用いたトランスポゾン解析から、異種ゲノムが混合した交配直後に、DNAトランスポゾンが平均的には活性化し、その後、抑制化が起きた可能性が示唆された。B. 雑種のヨーロッパトノサマガエル(ワライガエルxコガタトノサマガエル):雑種および親2種の雌雄生殖巣で発現するpiRNAsの配列を決定した。また、この雑種のロシア集団の多くで、コガタトノサマガエルのゲノムが配偶子形成過程で排除される傾向があることが明らかになった(Miura et al. Genes 12, 244, 2021)。
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