研究課題/領域番号 |
18K06394
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
岩崎 貴也 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 講師 (10636179)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地域固有種 / 日本海要素 / 集団遺伝 / 系統地理 / 最終氷期 / 日本列島 |
研究実績の概要 |
2021年度は、エゾツリバナ-ツリバナ、オオバクロモジ-クロモジ、マルバマンサク-マンサク、スミレサイシン-ナガバノスミレサイシンなど、日本海要素植物を含む7種群について、日本各地の集団から解析用サンプルを集めること、そしてサンプルが早期に集まった種について次世代シーケンサーを用いた遺伝解析を行い、遺伝構造・集団動態を推定することを主目的としていた。 しかし、前年度までに引き続き、2021年度も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって遠方の野外調査が困難な状況が続き、当初の計画通りに研究を遂行することは困難であった。2021年度は、ミスミソウ-オオミスミソウを対象に得られた遺伝解析データの再解析を2020年度から引き続き行い、論文執筆を進めた。また、DNA抽出が完了していたスミレサイシン-ナガバノスミレサイシンを対象に遺伝解析を開始した。研究を進める中で、同じスミレサイシン節であるヒメスミレサイシン、アケボノスミレ、シコクスミレを含めた合計5種での解析・比較が必要であると考えられたため、これらの追加種についても同時にサンプリング・解析を行った。スミレ属はDNA抽出を阻害する物質が多く含まれていたが、PVP-HEPESバッファーを用いた葉片洗浄を加えたプロトコルを用いることで、安定してDNAの抽出が可能となった。また、本研究では日本海側集団と太平洋側集団の間の分岐年代推定を重要な柱としているが、核SNPs情報に基づく推定だけでは不足と考え、葉緑体ゲノムを用いた分子系統解析・分岐年代推定も取り入れることにした。スミレサイシンについてはDNB-SEQ(外注)で5 Gbのシーケンスデータを取得し、ソフトウェアNOVOPlastyで葉緑体ゲノム全長を復元することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴って遠方への出張・調査が難しく、不足していた西日本のサンプルを十分に追加採集することができなかった。ただし、遺伝解析やデータ解析に集中した結果、一定の進捗を得ることができた。2021年度にできなかった調査や解析を2022年度に進めるため、科研費の期間を更に1年間延長した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度はワクチン接種や各種対策の普及により、遠方への出張・調査がかなり行いやすくなることが期待される。そこでサンプルが不十分な地域での調査を夏に行い、それまでに抽出を行っておいたサンプルと合わせて解析することで、秋までに複数種の解析を完了させる。ミスミソウ-オオミスミソウは調査が本格化する夏までに論文を完成させ、学術誌へ投稿する。核SNPsの解析に加えて、葉緑体ゲノム全長を用いた解析にも取り組むことで、多種系での日本海要素植物の進化史を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって遠方に出張しての野外調査が困難であったため、計画通りに研究を遂行することが困難であった。2022年度は、調査や実験など研究全体の実施が容易になる見込みのため、実施計画は2021年度の予定をそのまま繰り越す形で行う。
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