研究課題/領域番号 |
18K06396
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
井上 潤 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミックスユニット, 研究員 (10596779)
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研究分担者 |
西野 敦雄 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (50343116)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ゲノム系統解析 / オタマボヤ / 解析パイプライン / 尾索類 / 遺伝子系統樹 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,大きく二つに分けることができる:(1) 全遺伝子系統樹を推定する解析パイプライン (ソフトウェアの集合体) を発展させ,進化速度の均質な遺伝子 (解析マーカー) を選び出す分析法を開発する.(2) 進化速度の加速した生物の例として遊泳性尾索動物・オタマボヤ類に注目し,解析パイプラインの分析を介してその系統的位置を推定する. (1) 解析パイプラインを発展させ,注目した分類群の種の系統関係を推定するのに必要な遺伝子配列を選出する解析パイプラインを開発した.開発したパイプラインは,1 遺伝子の解析ではあるが,web tool, ORTHOSCOPE として公開し,論文として発表した.一方で,開発した解析パイプラインを全タンパク質遺伝子の解析に適用する作業も行った.その例として,左右相称動物内部でその系統的位置が不明な,無腸類に注目した.ゲノム系統解析を行うにあたり遺伝子ごとの系統樹から得た結果をまとめる新たな解析方法を開発することで,無腸類のように進化速度の速い種の系統的位置の推定にも,本研究課題の方法が適用可能なことが判明した. (2) 研究分担者である弘前大学・西野敦雄准教授とともに,お茶の水女子大学・湾岸生物教育研究センターにおいて,浮遊性ホヤ類の標本 40 個体を採集した.これらの標本の RNA 抽出作業は一時中断し,ORTHOSCOPE によってセルロース合成酵素 (CesA) をコードする遺伝子の解析を行い,論文として発表した.CesA はバクテリアから水平伝搬によってホヤ類に移動したと考えられていたが,バクテリアの他にホヤ類 2 種でその存在が確認されるにとどまっていた.本研究では,CesA が,ホヤ類を除く動物全般で失われていることを明確にした.さらに,CesA 遺伝子の解析により,ホヤ類内部の種の系統関係を推定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 解析パイプラインの開発は,予想以上に進んだ.一方で,(2) オタマボヤ類に注目した系統解析は,標本の採集を行うにとどまっている.これは (1) の解析パイプラインに労力を集中させたためである.(2) の作業が進んでいない理由は,RNA 抽出に適切な条件 (個体数,バッファー量など) を見出す作業が難航しているため,さらには,申請者が所属部署を異動し,その準備に時間を要したためである.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 開発した解析パイプラインのスクリプトを公開し,論文としてまとめる方向を考えている. (2) 所属を移動した先である国立遺伝学研究所・集団遺伝研究室は,オタマボヤなど微小なプランクトンから RNA 抽出を行う方法が蓄積されていない.そこで,上記の実験方法の蓄積がある沖縄科学技術大学院大学・マリンゲノミックスユニット (前所属) に採集した標本を託し,RNA 抽出と配列解読の作業を委託することとなった.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は 2595 円と少額であるため,ほぼ予定通り予算を利用したと言える.
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