交付申請書に記載した目的と計画は以下である。 研究の目的:全遺伝子系統樹を推定する解析パイプラインによって進化速度の均質な遺伝子を選び出す分析法を開発する. 研究実施計画:A. 遊泳性尾索動物のトランスクリプトームデータの解読。B. 独自に開発した解析パイプラインを尾索動物の解析に対応させて,系統推定マーカーの選定を行う。C. 得られた系統推定マーカーを用いて尾索動物の系統解析を行い,オタマボヤ類の系統的位置を推定する。 当該年度、申請者は、ORTHOSCOPE web version (https://www.orthoscope.jp) をもとに作られたスクリプト ORTHOSCOPE* (B) を利用し、解読した尾索動物 7 種のトランスクリプトームデータを予備的に解析を行った (A)。オタマボヤの系統的位置の検証をすぐに行える状態にあることを確認した (C)。実際、Isomoto et al. (2022) では、ハブ毒の生成に関わる遺伝子の系統樹を ORTHOSCOPE で推定し、これら毒関連遺伝子コピー数を種間で比較している。 海洋生物の分布パターンを考察する研究として、Yasuda et al. (2022) では、太平洋全域からオニヒトデを収集し、ミトコンドリアゲノムに基づいて系統樹を推定した。この研究は、東太平洋と西太平洋でオニヒトデ集団が分離し、両者で分岐パターンが大きく異なること、さらには、地理的に両者の中間に当たるハワイ集団がどちらとも異なる特化した一群であることを明瞭に示した。
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