研究課題/領域番号 |
18K06398
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
新倉 綾 国立感染症研究所, 動物管理室, 主任研究官 (10392325)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Babesia |
研究実績の概要 |
ヒトバベシア症はマダニによって媒介される動物由来感染症である 。病因であるBabesia属(ピロプラズマ目)の原虫(寄生性原生動物)ゲノムは染色体4本からなり、そのサイズは約6.5Mbpとアピコンプレックス門のなかでも最も小さい。同門のマラリアと比較しても1/4しかないが、寄生性のライフサイクルは同様で、原虫は哺乳類の赤血球にて増殖分裂を繰り返し(clonal expansion)、マダニの体内では生殖(中腸内、sexual expansion)と分裂(唾液腺内)を行う。Babesia microti KOBE、US、およびHOBETSU-lineageは日本において、ヒトへの感染が証明あるいは示唆されている原虫で、媒介マダニに加え抗原性も全く異なる。上記のなかでもUS-lineageによるヒトバベシア症は世界的に最も患者数が多い。初年度は、既報の米国標準株ゲノムとの比較を行うため、日本国内で分離されたB.microti US-lineage IpSG13-18-1株 (Zamoto-Niikura et al 2016 )と国内産Ixodes persulcatus (シュルツェマダニ)を用いた感染モデル(経齢間感染・幼ダニ―若ダニ)を作成し、そのゲノム解析を試みた。また、B.microti IpSG13-18-1をハムスターに摂取し、寄生率40%となった時点で全血液を回収し、ホストの白血球除去作業など高品質原虫ゲノムを得るための検討を行った。 今年度は、順次、脱皮、成熟した若ダニを用いて、解析を行う。また、赤血球ステージの原虫については、ホストゲノムの除去法を改善し、高品質の材料確保とゲノム解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
卵から幼ダニ(非感染)を準備するため、野外で採集した雌の成ダニ11匹を各々動物に吸血、放血落下させた。適度な環境でインキュベートし、2匹が産卵した。2ロットともに孵化して幼ダニを得られたため、B.microti IpSG13-18-1株を感染させたハムスターに吸血させた。約300匹が放血落下し、適当な環境下においてインキュベートして、脱皮、成熟した若ダニを得た。しかし、予想に反して幼ダニの吸血~脱皮~若ダニへ成熟に半年を要した。一方、感染動物の赤血球内寄生率がピークのときに感染赤血球を回収し、プラズモダイピュアフィルターを用いてホストの白血球を除去した。手順は添付説明書通りで行ったが、ホストゲノムのキャリーオーバーが多く、ゲノム解析の試料として不適当であった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、順次、脱皮、成熟した若ダニを用いて、解析を行う。また、赤血球ステージの原虫については、ホストゲノムの除去法を改善し、高品質の材料確保とゲノム解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況に示したように、高品質の材料を得るまでに当初の計画より期間を要したため、初年度に計画したゲノム解析の委託をしなかった。また、ゲノムデータの処理に人件費を計上したがこれも使用しなかった。
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