研究課題/領域番号 |
18K06398
|
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
新倉 綾 国立感染症研究所, 安全実験管理部, 主任研究官 (10392325)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 次世代シークエンス |
研究実績の概要 |
NCBIのBabesia microti referenceとなっている RI株ゲノムでは、染色体が合計4本で、ゲノムサイズはアピコンプレックス門(Apicomplexa)の中で最小の6.4MBである。本研究で、B. microti-groupに属する日本の分離株3系統、US系統、神戸系統、穂別系統とB. rodhaini .の全ゲノム配列をpacbioおよびIluminaのシークデータをもとに決定した。染色体本数は全てにおいて、RIと同様の4本であるが、全ゲノムサイズは穂別系統でRIより数%程度短かいことが明らかとなった。イントロンに着目してアノテーションを行い、以下の結果を得た。1.イントロンの多くが極端に短く20~25ntに集中している(極小イントロン)2.一方で、同一遺伝子内に極小イントロン以外のイントロンも混在している。3.オーソログ遺伝子においては、US、穂別、神戸系統のイントロンの殆どは極小イントロンで、B. rodhaniのそれは19nt にまで短縮している。さらに、複数個のオーソログ遺伝子を抽出してイントロン・エキソン構造を詳細に比較したところ、イントロンの位置、フェーズ、極小イントロンのサイズはよく保存されていた。ベクター媒介性原虫であるB. microti は自然界において、レゼルボア(clonal expansion)とベクターマダニ(sexual expansion) を交互に感染する。B. rodhainiは実験用マウスを用いて維持継代されてきた実験室株であり、マダニのステージでおこる生殖ステップを欠いている。動物継代のみで長期間維持した結果、イントロン長が変化したのか、それとも、すでに分離時に短縮していたのかは不明である。この点において、動物実験による検証が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定であった、血液ステージにおける原虫の解析はほぼ終了した。最終年度は、マダニの感染ステージにおける解析を終了させる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
感染マダニの作出は、幼ダニを感染動物に吸血させることで作出する予定であったが、計画通りに感染若ダニを得ることが出来なかった。今年度は計画を変更し、野外から採集したマダニの中から、感染個体を選び、直接唾液腺感染原虫を解析することとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計画を変更して、野外から回収したマダニを使用して、RNAデータを得ることした。結果として、実験室内作出感染マダニより、実践的データが得られると考えられる。過去の疫学調査により明らかとなっている、感染濃厚地域において陽性マダニ採集する。実験動物に吸血させることで、唾液腺内の活性化スポロゾイトを得て、RNAを抽出する。次世代シークエンスおよび発現解析により、マダニ特異的発現蛋白を同定する。以上の野外調査、実験室内実験および外部委託によるシークエンシングのため、助成金を使用する。
|