研究課題/領域番号 |
18K06399
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
西海 功 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (90290866)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 種多様性 / 起源地 / 大陸島 / 鳥類 / DNAバーコード |
研究実績の概要 |
日本産鳥類DNAバーコーディングの推進:バーコードに登録数が少ない99種のうち39種について計45個体の剥製標本を作製し、33種43個体のバーコード配列を読んで国際機関データベースBOLD Systemsへの登録をおこなった。また連携している山階鳥類研究所では42種83個体の登録がおこなわれた。その結果、20種について新たに大陸集団との遺伝的多様性比較が可能となった。BOLD Systemsへの登録はバウチャーとなる剥製の作成と博物館での保管が求められておりハードルは高いが一度登録されたデータは国際的に多くの研究者が利用可能なものとなり、特に価値が高い。
系統樹推定法の検討:まず、韓国とロシア、中国を中心として世界的なバーコードの登録を増やさなければ、正確な系統樹の推定と起源地の推定はできないので、アジア地域の鳥類バーコード推進の研究所への技術的な支援をおこなった。その結果、中国科学院動物学研究所が登録に向けて準備を整えた。韓国国立環境科学院も韓国の鳥類について次の登録準備を進めている。
核DNAの分析:対象の11種について既存サンプルの整理と新たなサンプルの収集をおこなった。カワセミ33個体、オオアカゲラ5個体、オオヨシキリ100個体、センダイムシクイ53個体、コガラ30個体、スズメ100個体、カワラヒワ71個体、ホオジロ57個体、ウグイス100個体、シジュウカラ100個体、ハシブトガラス85個体を整理した。日本のサンプルは十分にあり、朝鮮半島のサンプルは少ないながらあるが、ロシア極東域のサンプルは足りないので、収集計画を立てる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3つの主要項目においてサンプルの収集とデータ登録の蓄積は比較的順調に予定通りおこなわれているが、核DNAの分析とデータ分析についてはまだ手が付けられていないので少し遅れ気味であると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
日本産鳥類DNAバーコーディングの推進については国内の関連機関の助力を得ながら初年度と同様に進めていく。最終年度にはバーコードリファレンスデータを用いて日本の集団と世界の集団との遺伝的多様性を種毎に比較し、日本を起源地とする鳥種の数を推定する。系統樹推定法の検討は中立性検定などができるように、世界のバーコードリファレンスデータが充実するよう引き続き海外の関連機関の助力をおこなう。最終年度にはできるだけ多くの種で中立性検定などによって集団の歴史を推定する。核DNAの分析については、対象の11種のサンプルのうち特にサンプルの不足する地域の収集を進める。またマイクロサテライトDNAのプライマーを作成して分析を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
DNA実験助手のアルバイトが十分に確保できなかったために人件費約25万円とプライマー代の消耗品の約10万円が支出できなかった。今年、DNA実験、特にマイクロサテライトDNA分析を進めて遅れを取り戻す。旅費については、ロシアへの調査が先方との調整が付かなかったために来年度の調査で支出することにする。
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