研究課題
これまでに245種1778個体の鳥類の日本産繁殖種のDNAバーコード領域の塩基配列を調べ、BOLD Systemsのデータベースに登録した。この最新のデータを分析して、近縁種間および種内の系統および大陸と日本の遺伝的多様性の比較から日本起源の種の推定を再度おこなった。その結果、日本起源が示唆された種は7種増えて47種となった。逆に大陸起源が示唆された種は52種になり、日本集団と大陸集団で系統関係や遺伝的多様性に違いが見られない種は48種になった。分析数を増やしたものの、大陸にも分布する日本産鳥類種のうち3分の1から半数は日本起源の可能性があるという評価は維持された。新たに日本起源が示唆された種の中で注目すべき種はカワウで、最近縁種であるウミウが日本海周辺に分布が限られており、欧州や豪州まで広く分布するカワウ集団の中で日本集団が最も初期に分岐し、また遺伝的多様性も最も高かった。日本(あるいはその周辺)に最近縁の固有種がおり、かつ種内系統では最も初期に日本集団が分岐したことを示す鳥類の例としては、ヤマシギ、オオアカゲラ、トラツグミ、センダイムシクイ、カケスに次いで6種目となった。その他にも次の成果が得られた。クロツグミがカラアカハラとわずか0.4%しか離れておらず、ヒマラヤハイイロツグミとムナグロアカハラも含めて4種が同一のBIN(Barcode Index Number)に入ることがわかり、この種群のヒマラヤ起源が示唆された。ウミスズメ、カワラヒワ、シジュウカラの系統地理について共著で国際誌に論文発表した。ライチョウの種内系統地理をまとめて書籍のセクションとして出版した。ミャンマー南部タニンタリー州のフィールドガイドを出版し、鳥類のセクションを執筆した。ツバメの渡り経路と遺伝系統の関係について国内学会で、キビタキとキジバトの系統地理についてそれぞれ国際学会で発表した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 図書 (2件)
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