メタセコイア属が日本列島から絶滅した要因として、「冬季の気温低下、夏の温度上昇、海水準変動による生育地の移動の圧力、低地の減少、乾燥化」などの考えが示されているが、明確な要因は不明である。 メタセコイアは1950年以降、日本各地で植栽され大きく育っている。しかし、自然繁殖し、幼木が形成されている場所は少ない。そこで、メタセコイア属が日本列島から消滅した原因の鍵を探るために、メタセコイアの実生が形成されている地域において、その生育状況を調査した(岐阜県郡上市、神戸市立森林植物園、大阪市立長居植物園、大阪公立大学附属植物園、京都市深泥池、香川県さぬき市)。 岐阜県郡上市、神戸市立森林植物園では、実生が2年目以降も生存し生育し、その消長と成長を記録した。最も旺盛に自然繁殖をしている郡上市での観察では、樹齢が異なる幼木があり、自然更新が行われている。2019年の秋に残存していた2019年実生が、2020年秋には、76%、2021年秋には61%に減数していた。春から秋の変化を明らかにするために、調査区内に2カ所のコードラート(1平方メートル)を設置した。神戸市立森林植物園の調査区は、一見乾燥している立地であるが、2018年実生20個体のうち、2022年6月時点で9個体残存している。2022年度から、実生生育地の3カ所(岐阜県郡上市、神戸市立森林植物園、大阪公立大学附属植物園)に気象観測装置を設置し、温度、湿度、土壌水分量、光量を測定し、環境の違いを観測した。 また、実験的な研究として、(1)郡上市と大阪公立大学附属植物園の実生を、郡上市において播種し、生育状況を継続して観測した。発芽率は郡上市産の種子の方が高いが、実生の成長量は変わらない。(2)2020年度に発芽率の実験を行った実生を継続的に栽培し、成長を観測した。
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