島嶼の河川に生息する淡水魚の分散の実態・分散能力の退化の有無を明らかにすることを目的として研究を実施した。主な対象地を佐渡島とし,比較対象として,隠岐諸島,上越など,島と対岸などを選定した。ハゼ亜目,カジカ科,アユについて,野外生態調査,環境要因の計測を行った。耳石を用いた微量元素分析,安定同位体分析から,島嶼の淡水魚はその多くが生活史の一時期に海を利用していることが明らかとなった。また,仔魚は,海水よりも淡水で高生残であった。島嶼の淡水域においては,残留型によってその場所に留まるよりは,特異な環境に適応した生態や分布形態を獲得しつつ,分散の可能性を残すという方向性をもつ可能性が考えられた。
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