研究課題
本研究計画の大きな目的は以下である。生物は、過去の経験を記憶し、学習する。記憶・学習の至近的なメカニズムを扱う研究は多いが、いくつかの遺伝子で巧妙に制御されている。これまで、その至近メカニズムに注目が集まり、学習の進化とその適応的意義に焦点が当たっていない。本研究では、モデル甲虫を用い、実験的な選択によって生じる学習の進化と個体形質への影響を調べる。実験結果から、分子生物学的・量的遺伝学的知見を取り込んだ生態学的手法を駆使し、表現型から遺伝子レベルまでの情報を抽出し、学習行動の適応的意義を探る。これまでの成果として、モデル甲虫として有用なオオツノコクヌストモドキを使用して、以下の研究展開をした。最初に行動の変化が神経伝達物質(生体アミン類)によって左右されることを特定した。またその変化によって、本種の行動にも大きく変化することがわかった。その行動を具体的に上げると、闘争行動、分散行動、繁殖行動と歩行活動である。これら行動形質は本種の適応度に大きく寄与するものである。また神経伝達物質は記憶と密接な関係があり、本種の学習に影響を及ぼすことが考えられる。また量的遺伝学的解析から、本種の学習行動には遺伝的な基盤があり、これら結果は専門の国際誌に掲載された。加えて、現在ではオオツノで記憶制御に関する候補遺伝子を探索し、発見しつつある。つまり探索した遺伝子の塩基配列の違いをシークエンス解析により明らかにしている。有意なアミノ酸配列が検出された遺伝子において、RNA干渉法を行い、記憶・学習行動に関与するか調査を行った。その結果のほとんどは、国際誌に掲載されている。
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Behavioral Ecology and Sociobiology
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