• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

音声伝播をもとにした野生動物の生息環境のラピッドアセスメントに関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K06418
研究機関広島大学

研究代表者

奥田 敏統  広島大学, 統合生命科学研究科(総), 教授 (20214059)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード熱帯雨林 / 生物多様性 / 林冠 / シロテナガザル / LiDAR計測 / 逆転層
研究実績の概要

2021年度はシロテナガザル(以下Gibbon)のcallの時間帯について林冠面での逆転層が発生する時間帯と深いかかわりがあるのではないかとの仮説に基づき、森林内、林冠、林冠上空で測定した温度データと、GibbonのCallの発生頻度との関連性について分析をおこなった。本研究は、熱帯雨林の林冠に生息するGibbonが個体間で交わすcallを手がかりに音声伝播の視点から、Gibbonにとって住み心地のよい生息環境を空間的に評価することを目的とするものである。調査地は、マレーシア、ネグリセンビラン州、パソ保護林とし、これまでに取得したGibbonのcallと林冠温度のデータを分析対象とした。その結果以下のことが明らかとなった
Gibbonのcallは夜明け前後から(現地時間7:00)~昼前(12:00)頃まで多発するその際、♀のGreat callが先導するが、必ずしも♂のcallがそれに続くとは限らない。雨季である12月、少雨期に差し掛かる2-3月、同じく8月で観測したCallの発生頻度を比較したところ、降雨が多く気温の低い12月では、早朝から12:00ころまで♀のcallは、単発的に、だらだらと、発生するが、明瞭なピーク時が見られない。一方少雨期である3月、8月では午前11時前にcallの発生が最大となるがことが分かった。
また、GibbonのCall発生頻度との関連性から、森林内の冷気と林冠表面の暖気が入れ替わる時間帯とを分析したところ、少雨期の3月、8月では昼12:00頃まで、林冠直下の温度が林冠上空の温度に比べて有意に低いことが分かった。多雨期の12月ではこうした温度勾配が不明瞭になることが分かった。これらの結果から、Gibbonのcallは逆転層の形成・維持に深くかかわっていることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

シロテナガザル(Lar Gibbon)のcallの時間帯について林冠面での逆転層が発生する時間帯と深いかかわりがあるのではないかとの仮説に基づき、森林内、林冠、林冠上空で測定した温度データと、主に♀個体のCall (great call)の発生頻度との関連性について分析をおこなった。その結果、GibbonのCallは林冠面で気温の逆転層が維持される昼前後まで続くが、逆転層が消失する(温度勾配が不明瞭になる)とcallはほぼ途絶えることが明らかとなった。逆転層が形成されている間は音が凸型に伝播し、遠方に強力かつ早く伝わることが知られている。結果論であるが、Gibbonはこの時間帯での林冠層における温度勾配と逆転層を彼らのterritoryの維持に有効に使っていることが考えられる。同様の温度勾配は林冠が開けた場所(森林伐採跡地)や周辺の農地(oil palm plantation)では不明瞭となるか、あるいは形成されても消失するまでの時間が短いことも分かった。以上のことはGibbonの生息場所として、林冠高が高く、冷気を長時間蓄える森林の特性が極めて重要であることを示している。野生動物の保全という視点から、森林の断片化・分断化や森林伐採などがどのような影響を及ぼすかを森林内の微気象環境から論ずるという点で、得られた成果は極めて重要な意義を持つと考えられる。
なお、Covid19の感染拡大により、2021年度も現地マレーシアでの調査は実施できなかったが、これまでのデータで、音声伝播と森林環境の関係分析については概ね達成できた。現在結果をまとめて投稿準備中である。

今後の研究の推進方策

今年度もCOVID-19の感染拡大によりマレーシアへ赴いて野外調査を実施することがかなわなかった。とはいえ、マレーシアのカウンターパートとは密接に連絡を取っており、今後の研究展開(手法の改良など)について協議を重ねた。
1.2022年度まで延長することになっており、渡航が可能になり次第、現地調査を実施し、観測地点を増やしGibbonのcallの時間帯、林冠環境との関連性についてのデータを取得する。
2.サーモグラフィ―カメラ、LiDARをドローンに搭載し、個体分布、行動圏の特定にどの程度有効かについて調査する。
3.関係者+関連分野の研究者などでWorkshop開催を検討する。

次年度使用額が生じた理由

Covid19の感染拡大により、現地マレーシアで予定していた調査が実施できなかった。またそれに伴い、海外渡航費の執行が出来なかった。
22年度では、マレーシアにて現地の研究者と共同で野外調査、セミナーを実施する予定である。その際に発生する渡航費、滞在費、調査補助費の支弁に残額(804721円)を充てる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 国際共同研究 (1件)

  • [国際共同研究] マレーシア工科大学/マレーシアプトラ大学(マレーシア)

    • 国名
      マレーシア
    • 外国機関名
      マレーシア工科大学/マレーシアプトラ大学

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi