熱帯雨林のアンブレラ種として、種子繁殖などに貢献しているシロテテナガザル(Hylobates lar)に焦点を当て、彼らが個体間で交わす鳴声の発生頻度が森林の垂直方向の要素(林冠高や地形)や林冠面から森林内の微気象の時間的変化と、どのような関係があるかを明らかにすることを目的とした。調査の結果、シロテテナガザルの鳴声は、林冠面で形成される温度の逆転層が顕著になる時間帯に多く発生すること、鳴声が頻発する箇所は空間的には林冠高が高い場所や、尾根筋などの地形に集中することが分かった。またそうした鳴声伝播は冷気を十分に長時間蓄えることができる森林環境で顕著になることが明らかとなった。
|