2021年度においては、研究成果の最終とりまとめとして、前年度までに獲得したチョウチョウウオ科フウライチョウチョウウオ、ニザダイ科ニザダイ、ハコフグ科クロハコフグについてのデータ分析をさらに進め、不足分の野外データを鹿児島県口永良部島および沖縄県瀬底島のリーフにおいて獲得し、これら3魚種に関する学術論文の発表準備を集中的に進めた。 期間全体を通じて実施した研究成果については、産卵移動をみせるサンゴ礁魚3種のフィールド調査により、それぞれに魚類生態学分野における貴重な新知見を獲得できた。フウライチョウチョウウオとニザダイでは産卵現場を直接観察することができなかったが、産卵移動習性が関係する生態データを獲得することに成功した。具体的には、フウライチョウチョウウオでは、ペア関係の強固さを読み解く手がかりとして、産卵移動の発生パターンとペア防衛の雌雄差に関する観察・実験データを獲得した。ニザダイにおいては、従来は藻類食魚と考えられてきた同種の大型成熟個体において、動物プランクトンの高い栄養貢献を示唆するデータを獲得した。一方、クロハコフグにおいては、当初の目的通りの産卵移動を含めた繁殖生態データを詳細に獲得することに成功した。その成果論文(Male territory-visiting polygamy of the white-spotted boxfish Ostracion meleagris (Ostraciidae) involving daily spawning migration)は国際誌に投稿中である(2022年1月13日付受付、4月19日付査読結果返信、現在改訂作業中)。加えて、浅場に分布する餌生物を主食とする種特異的な採餌生態がクロハコフグの産卵移動の背景にあることを突き止め、その研究成果をまとめた論文を発表した。
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