研究課題/領域番号 |
18K06421
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
伊藤 文紀 香川大学, 農学部, 教授 (50260683)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 卵巣 / 働きアリ / 栄養生態 / 卵巣小管 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、国内各地で多種のアリ類を採集して女王アリと働きアリの卵巣小管数を算定するとともに、飼育下で働きアリによる栄養卵産卵の有無、栄養卵の消費のされかたなどについて調査した。(1)ヤマアリ亜科各種の働きアリと女王アリの卵巣小菅数や働きアリが産んだ卵の発生について調査した。ウワメアリ属群では、アメイロアリ属、サクラアリ属、ヒゲナガアメイロアリ属、ウワメアリ属では働きアリに多型がなく、卵巣小管数は2本(1-1)であった。働きアリにサイズ多型があるニセケアリ属とムネクビレアリ属でも、大型の兵アリがいるにも関わらず、いずれの個体も2本(1-1)であった。また、オオアリ属のウメマツオオアリ亜属と、ヒラズオオアリ属でも体サイスに関わらず働きアリの卵巣管数は2本(1-1)であった。一方で、エゾアカヤマアリ、ミカドオオアリ、アメイロオオアリなどでは体サイズの大型化に伴って卵巣小管数が増加した。アメイロアリ、ケブカアメイロアリ、サクラアリ、アメイロオオアリでは、女王不在のコロニーをつくると直ちに産卵を開始し、まもなくオスアリが生産された。(2)カワリゲアリ属の一種について行動を詳細に観察し、女王存在下で働きアリは栄養卵を産卵し、それが女王アリによって摂食されることを明らかにした。また女王不在下ではすぐに産卵するものの、卵はふ化することはなかった。(3)働きアリに卵巣がなりヒメアリ属、カドヒメアリ属、シワアリ属について餌の利用様式と給餌の様式を調査し、いずれの種も、働きアリが持ち帰った固形餌を幼虫に与えるが、女王はもっぱら働きアリからの吐き戻しを餌としていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度と同様に、多くの種を解剖し、卵巣小管数のデータを得ることができた。また多種を室内で飼育して栄養卵生産とその消費過程を観察できた。無女王条件での雄卵生産についても多くの知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
各地で、これまでにまだ観察できていないアリ類のコロニーを採集し、卵巣小管数のデータを得るとともに、飼育観察によって栄養卵生産とその消費過程、無女王条件での雄卵生産についての実験を継続する。また,年間を通じて定期的に女王のいないコロニーを作成し、季節によって働きアリ卵巣の機能がどのように変化するかを調査したい。解剖データをはじめ、卵巣についての知見とともにコロニー構成や習性観察の結果がまとまったものから順次論文にまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に予定していた野外調査が新型コロナウィルス流行の関係で実施できず、使用予定だった旅費が持ち越しとなった。旅費として今年度も使用予定だが、社会情勢によっては変更を余儀なくされるかもしれない。
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