研究課題
申請者のこれまでの調査により、日本固有種や温帯型隠蔽種とみられる種の一部が台湾北部でも発見されたことから、日本固有とされている種は台湾北部から直接加入してきている可能性が出てきた。そこで本研究では、日本温帯域と台湾を中心に、比較として日本亜熱帯域を加え、それらのサンゴ相の野外分布調査を行うと共に、日本固有とされている種に焦点を当て環境要因、分類学的・遺伝学的な関係性を精査する。それにより、日本温帯域のサンゴ群集の独自性もしくは台湾との共通性を明確にし、これらの群集がいつ、どこから、どの様にして今ある場所に存在するのに至ったのかを推定することを目的とする。昨年度に続き、今年度も台湾および日本温帯域の数カ所で種の分布調査および試料採集を行った。また、日本亜熱帯域の喜界島でも調査を行った。まず、台湾の調査について、昨年度天候悪化で予備調査に終わった北部域を重点的に調査した。調査した結果、日本温帯域と亜熱帯域の種が混在していることが分かってきた。日本温帯域のデータとしては宮崎と環境が似ていると考えられている熊本県天草の調査を行った。種瀬組成調査の結果、ほぼ同じ種組成であった。また、温帯に特異的に生息している種の有無を喜界島においても調査した。採集した試料については、遺伝子解析と形態解析を進めているところであるが、日本温帯固有種と呼ばれている種が台湾で稀ではあるが生息していることを確認することができた。遺伝的にも違いが見られず、一部の種については、日本温帯サンゴの台湾起源の可能性は高いと思われる。
2: おおむね順調に進展している
台湾北部での調査を重点的にすることができたのが大きい。サンプルはある程度採集できたため、日本のサンプルとの比較などを随時行っていくことが可能となった。
当初、5月に再度台湾への調査を計画していたが、世界的な情勢悪化のため海外での調査が厳しい状況である。現在は秋以降に調査計画を遅らせる予定であるが、仮に行けなくなった場合には、台湾にいる研究者に水温ロガーの回収を頼む予定である。さらにその場合でも、昨年度の遺伝的および形態的なサンプル解析をしっかり終わらせることで、本計画の一番のポイントである台湾と日本温帯域との比較はある程度可能である。
遺伝子解析費が1回4万円程度であり、解析をしたいサンプルが多いため、1万円を次年度の助成金と合わせることで少しでも解析数を増やしてデータを取る予定である。
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Contributions to Zoology
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ZooKeys
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