最終年度である令和2年度の研究では、中・南琉球での詳細なサンゴ群集データを取得・解析するため、昨年度までに実施ができなかった多良間島13地点、慶良間諸島5地点、を含む石西礁湖内31地点、沖縄島周辺10地点、与論島7地点、の計66地点での潜水調査を実施した。潜水調査では、各海域におけるサンゴ群集の現状を定量的に(サンゴ被度・属レベル組成・多様度と併せて、底質組成や稚サンゴ密度など)把握し、サンゴ群集の特徴比較をおこなった。今年度までの一連の調査結果をまとめて解析したところ、南琉球でのサンゴ群集の衰退状態からの回復が2017年以降でほとんど進んでいない一方、中琉球の島嶼では過去の攪乱からの回復が顕著に起こっている事、などが判明した。また、これまでの属レベルでの組成分析に加え、最終年度の調査では、該当海域でのライントランセクト法による潜水調査で、サンゴ種レベルまでの判別を行ったことにより、琉球列島における広域でのサンゴ種分布傾向の再検討の必要性や、希少性の高いサンゴ種が抽出された。 また、琉球列島各海域での調査で、一部海域で顕著なサンゴのBBD(ブラックバンド病)などの罹患状態が確認されたことから、罹患から死亡までの促進条件の推定を行うための実験系を設定し、培養したビブリオ菌による致死的影響を確認しつつ、光や温度などの環境負荷条件を加えることで罹患速度や確率が急激に増加する傾向などを見出した。また、八重山、多良間、沖縄、慶良間の15地点で底砂採取を実施し、比重分離法を用いて分離することで、定砂中のマイクロプラスチックなどの含有量を明らかにした。 一連の成果については、一般向け還元として、自然再生協議会などでの講演や、シンポジウムおよび国内学会での発表をおこなった。
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