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2020 年度 実施状況報告書

鳥類の卵表面を覆う脂質の定性・定量評価とその機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K06429
研究機関東海大学

研究代表者

松井 晋  東海大学, 生物学部, 講師 (20727292)

研究分担者 佐藤 敦  東海大学, 生物学部, 准教授 (80205898)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード卵表面の撥水性 / 脂質の移行
研究実績の概要

鳥類の卵殻表面の構造は細菌などが卵内に侵入することを防ぐ重要な役割を担っており,外気と直接接触する卵殻表面は鉱化されたワックス状の構造を持つことが知られている.しかしこれらの脂質が産卵時に既にメスの体内で卵表面に付着しているのか,産卵後に卵表面を覆うようになるのか詳しいことがわかっていない.本研究課題における2019年度の調査から,スズメ目鳥類の一種であるシジュウカラの卵表面を覆う脂質は産卵期より抱卵期の方が多なり,卵表面の脂質は産卵時に既に付着しているものに加えて,抱卵開始後に外部から卵表面に移行してくることが示唆された.そこで卵表面を覆う脂質の由来については,卵を温める際に卵表面に直接触れるメス親の腹部の皮膚(抱卵斑と呼ばれる部分)や,羽繕いの際に尾羽の基部にある尾脂腺からの分泌されるオイル(尾脂腺オイル)に注目して,2020年度はサンプルサイズを補うための追加の実験と,抱卵期に卵表面に移行する脂質の由来を明らかにするための調査を計画していた.しかし2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で,実験施設のある建物への入構や利用が大きく制限されたために,予定していた実験を中止せざるを得なかった.ただし,巣箱を利用して繁殖する鳥類の繁殖状況のモニタリングは実施した.2019年度の巣箱調査で外来種アライグマによる繁殖の攪乱が見られたため,森林性鳥類の卵,ヒナ,親鳥が外来種の捕食者によって深刻な被害を受けないように2020年度は巣箱の形状を改良した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

2018年度と2019年度はシジュウカラやスズメなどの鳥類を主な対象として,繁殖生態に関する野外調査と室内実験の両方を実施することができた.しかし2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で,実験施設のある建物への入構や利用が大きく制限されたため, 巣箱を利用して繁殖する鳥類の繁殖状況のモニタリングは実施したが,繁殖巣からの卵採取を伴う室内実験を中止した.
室内で実施する実験については,これまでに接触角計を用いて卵殻表面の撥水性の測定によって,シジュウカラの卵表面の撥水性が繁殖ステージの進行に伴って変化するという知見を得ている.また,卵表面の脂質を定量的に評価する手法としてSPV(Sulfo-Phospho-Vanillin)法を利用することも可能である.また,本研究課題における室内での実験は,鳥類の繁殖生態に関する野外調査が順調に進んで初めて実施可能である.2018年から継続的に巣箱を利用して繁殖する鳥類の繁殖状況のモニタリングを実施している.2019年度の巣箱調査で外来種アライグマによる繁殖の攪乱が見られて,森林性鳥類の繁殖成績が著しく低下したが, 2020年度は巣箱の形状を改良することでアライグマによる捕食を回避することができるようになった.
2020年度は巣箱を利用して繁殖する鳥類の繁殖状況のモニタリングは実施したが,卵表面の撥水性のテストに関するサンプルサイズを補うための追加の実験や,抱卵期に卵表面に移行する脂質の由来を明らかにするための実験を実施することができなかった.このため全体的に研究に遅れが生じており,期間を2021年度までに延長した.

今後の研究の推進方策

2021年度が本研究課題の最終年度となる.2020年度に室内実験が実施できなかった影響で,2018~2019年度に得られた卵殻表面の撥水性に関する繁殖ステージに伴う変化や,産卵期と抱卵期における卵表面を覆い脂質量の比較に関する追加の実験,卵表面を覆う脂質の由来を明らかにするため実験については,まだサンプルサイズが十分ではない.このため営巣数が比較的多いシジュウカラとスズメを主な対象として,2021年度もこれまでと同様の調査を進めていく.2019年度の予備的な調査から,一腹卵数の多いヒガラやシジュウカラは,一腹卵数の少ないスズメやヤマガラと比べて,卵表面の撥水性が高い傾向がみられたことから,2021年度もこれらの種においても卵表面の撥水性を測定して,鳥類の卵表面の撥水性と一腹卵数の関係についても調べる.

次年度使用額が生じた理由

2020年度に新型コロナウイルス感染症の影響で室内での実験を実施することができなかったため次年度使用額が生じた。本研究課題を2021年度に実施する際に必要となる野外調査、サンプルの処理、得られた成果を発表する際に使用する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 西表島における鳥類標識調査(1975-2018)および鳥類生息状況等モニタリング(2019-2020)で記録された鳥類相2021

    • 著者名/発表者名
      平田しおり、松井 晋、河野裕美
    • 雑誌名

      東海大学生物学部紀要

      巻: 9 ページ: 19~32

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Breeding Status and Sex Ratio of Ancient Murrelets Captured in the Nocturnal At-Sea Congregation Off Teuri Island, Japan2020

    • 著者名/発表者名
      Matsui Shin、Whitworth Darrell、Sugita Norimasa、Nishiumi Isao
    • 雑誌名

      Ornithological Science

      巻: 19 ページ: 203~203

    • DOI

      10.2326/osj.19.203

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Habitat Selection of Skylarks During the Breeding Season on the Volcanic Slope of Mt. Tarumae2020

    • 著者名/発表者名
      Ito Yohei、Matsui Shin、Shiraki Saiko、Ueda Keisuke
    • 雑誌名

      Ornithological Science

      巻: 19 ページ: 167~167

    • DOI

      10.2326/osj.19.167

    • 査読あり
  • [学会発表] アライグマの捕食回避に適した森林性鳥類の巣箱の形状2020

    • 著者名/発表者名
      渡邊大雅、松井 晋
    • 学会等名
      バードリサーチ鳥類学大会2020 Online
  • [学会発表] 森林性鳥類の繁殖期における蠕虫感染率の種間比較2020

    • 著者名/発表者名
      石倉日菜子、松井 晋、川路則友
    • 学会等名
      バードリサーチ鳥類学大会2020 Online

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公開日: 2021-12-27  

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