研究課題/領域番号 |
18K06433
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
友常 満利 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 講師(任期付) (90765124)
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研究分担者 |
藤嶽 暢英 神戸大学, 農学研究科, 教授 (50243332)
吉竹 晋平 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 助手 (50643649)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイオチャー / 森林生態系 / 物質循環 / 地球温暖化 / 有機物分解 / 土壌呼吸 |
研究実績の概要 |
本研究はバイオチャー散布によって変化するリター層の物理的 (保水性・通気性)・化学的 (元素・化合物組成) 構造とそれにともなう微生物群集 (組成・活性) の関係から、リターの分解速度 (無機化、溶脱、破砕) に与える影響を解明し、リター層の持つ炭素貯留と栄養塩供給の機能を評価するものである。 次年度は対象としている落葉広葉樹林 (コナラ林) の野外実験区において、リターの分解速度の測定を継続するとともに、土壌の物理的・化学的構造の解析に着手した。リターの分解速度は、バイオチャー散布の数か月後に散布区と対象区の間で差がみられていたが、徐々にその差が小さくなる傾向にあった。これはバイオチャー散布のリター分解への影響は一時的なもので、長期的なリター層の炭素貯留に大きな影響を与えないことを示唆している。 リター層の物理性の解析においては、リター層を構成する有機物のほうが下層の鉱質土層の土壌粒子よりも水の出入りが激しく、またバイオチャー自体の水分保持能が極めて高いことが示された。これは、降雨が少なく土壌全体が乾燥するような状況において、バイオチャーに含まれている水分がリターに供給され、リター分解が加速することを示唆している。 化学性の解析においては、リターや土壌中の各種の元素がバイオチャー散布によって異なる挙動を示すことが明らかになった。特に窒素はリター中に含まれていた無機態窒素がバイオチャーに吸着されるが、リンはバイオチャーからリターや土壌中にかなりの量が放出されていることが示された。これは、バイオチャー散布による土壌圏の生物性の変化によって引き起こされるものではなく、散布自体が直接土壌の物理性と化学性を改変していることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リター分解の測定において、野外に設置したリターバックの一部が欠損してしまったため、当初の予定通りの間隔で試料を回収することができなくなった。回収する間隔を広げることで対処することとした。物理性と化学性の分析において、本年度は予備実験を主としていたが、対象とする試料の解析まで着手できた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、野外環境下でのリター分解速度の測定を継続し、バイオチャー散布後の三年間のリターの動態を明らかにする。これらの要因として、これまでに解析を行ってきたリター層の生物性、物理性、化学性の変化を統合し、リターの分解速度がなぜ変化したのか、その要因を精査する。さらに、バイオチャー散布によるリター由来の炭素放出量を算出し、バイオチャーを用いた森林生態系への炭素隔離効果を評価する。
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