研究課題/領域番号 |
18K06441
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
安河内 彦輝 三重大学, 地域イノベーション推進機構, 助教 (60624525)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高地適応 / 自然選択 / 低圧低酸素 / 全ゲノムシーケンス / ボリビア / アンデス高地集団 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、南米ボリビアのアンデス高地集団における低圧低酸素環境への適応に寄与する遺伝的・生理的特性を包括的に理解することである。今年度までに次世代シーケンサー(Hiseq X TenまたはNovaSeq 6000,Illumina社)により計25検体(男性16名、女性9名)の全ゲノム塩基配列データを決定した。これらのデータおよび公共データベースから南米集団と外群集団(アジア、ヨーロッパ、アフリカ集団)の全ゲノム配列データを用いて集団構造を比較したところ、南米低地集団はボリビアとペルー高地集団に比べて他集団、特にヨーロッパ集団との遺伝子移入がかなり進行していることが示された。また、ボリビア集団よりもペルー集団においてヨーロッパ集団からの遺伝子移入の進行がみられた。 先行研究で、SENP1遺伝子の一塩基多型(SNP; rs7963934)が血中ヘモグロビン(Hb)濃度と関連があることが報告されている。そこでボリビア高地集団102検体を対象に、TaqMan法によってrs7963934の遺伝子型を決定したが、Hb濃度とSNPとの間に明確な関連性は認められなかった。次に、チベット高地集団でHb濃度との関連が報告されているEGLN1遺伝子の4 SNPsをTaqMan法によって調査した。解析に用いた4 SNPsの選定は連鎖不平衡を考慮して、極力EGLN1遺伝子全体のSNPsの遺伝子型が推定できるようにした。本解析から、rs1769792がHb濃度と有意な関連を示した。4 SNPsから推定したハプロタイプ(SNPの組み合わせ)頻度を調べたところ、ボリビア集団で頻度が高いハプロタイプほどHb濃度も高いことが示された。さらに、この集団で最も頻度が高いハプロタイプは、南米高地集団以外の人類集団では顕著に頻度が低いことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では20検体の全ゲノム塩基配列の決定を予定していたが、シーケンスコストの低下もあり25検体の配列を決定することができた。また、TaqMan法による関連解析も行い、EGLN1遺伝子の解析については興味深い結果も得られている。これらのことより、研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると考える。現在、SNP解析と並行して、全ゲノム塩基配列を用いた大規模データのゲノム解析も進行しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
現在、全ゲノム塩基配列を用いた解析が進行しているところではあるが、データの規模が大きいため、計算処理時間が膨大になっている。そこで、効率良く研究を推進する方策として、既に先行研究で報告されている高地適応に関連するような遺伝子領域を選んで、TaqMan法でSNPの遺伝子型を決定する。また、様々な集団の多型データをデータベースなどから取得し、併せてその遺伝子領域の解析を詳細に行う。 これまでにチベット高地集団や高地に生息する哺乳動物などでEPAS1遺伝子多型が高地適応に寄与することが示唆されている。現在、ペルー高地集団で正の自然選択が作用したことが示唆されている候補SNPや漢民族集団で急性高山病罹患率に関連するSNPのTaqManプローブを既に設計している。今後、SNP解析と全ゲノム配列データ解析を並行して、効率的に研究を推進していくことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた20検体以上の全ゲノム塩基配列決定(マクロジェン社に委託)は計画通りに実施することができた。しかしながら、大規模データの解析に要する計算処理時間が膨大になってしまい、後の実験などで使用する予定だった予算が使えず現在に至っているのが現状である。したがって、今回の繰り越し予算を、全ゲノム配列解析で同定した遺伝子領域のSNPタイピング実験や論文掲載の費用などに充てる予定である。
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