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2019 年度 実施状況報告書

東アジアにおける農耕拡散の実態解明に向けたヒトの形態解析と化学分析の融合研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K06443
研究機関鳥取大学

研究代表者

岡崎 健治  鳥取大学, 医学部, 助教 (10632937)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード新石器革命 / 長江デルタ地域 / 良渚文化 / 歯冠形態 / 口腔疾患 / 四肢骨形態 / 同位体分析 / 歯石デンプン粒
研究実績の概要

本研究の目的は、形態学と化学的分析を統合して、水田稲作起源地における人類集団の移動・拡散の実態をミクロの視点(個体単位)で解明することにある。中国江蘇省蒋庄遺跡のおよそ240基の墓から出土した良渚文化期(新石器時代中期)の人骨を主要な対象としている。2019年度については、9月に南京博物院江南工作所にて、連携研究者と蒋庄遺跡人骨の調査を行った。歯冠計測、口腔疾患の観察および歯石採取(岡崎)、四肢骨計測(高椋)などの作業を行った。本人骨資料は、昨年度から継続して研究してきたが、今回の調査によって、形態データの抽出と同位体分析用の資料採取を完了することができた。放射性炭素年代測定と安定同位体分析については、連携研究者ら(米田、覚張、板橋)によって既に測定済みである。人骨の年代は、6個体から採取した資料がBCE3,100~2,200年の範囲に収まり、考古学的年代と矛盾しなかった。炭素安定同位体比による食性分析では、全員がC3植物の食者と推定され、C4植物の食者は検出されなかった。ストロンチウム安定同位体比による出自推定では、50体以上の分析結果が示されているものの、同遺跡から出土した動物骨(イノシシ、ウシ)の分析結果と対比しても移入者は検出されなかった。形態解析については、歯冠計測値を基にしたペンローズの形態距離を算出した結果、蒋庄集団は、地理的に比較的近い広富林集団や馬家浜集団に類似しなかった。新石器時代中期の長江デルタ地域では、歯冠形態の集団変異が大きい傾向がみられた。また、蒋庄集団の歯冠サイズはかなり小さかった。口腔環境については、観察データの集計途中ではあるが、中国の他の新石器時代集団と同様に疾患頻度はかなり低かった(齲歯率4.4%)。採取した歯石については、連携研究者(渋谷)が検鏡した結果、加熱によって損傷したと思われるデンプン粒が大量に確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

主要な研究対象としている蒋庄遺跡について、整理済み人骨資料は予定よりも早くにデータ収集と分析資料の採取を完了することができた。ただし、2020年3月に予定してた周辺遺跡における人骨資料の調査については、新型コロナウィルスの蔓延による渡航自粛要請によって、遂行することはできなかった。

今後の研究の推進方策

当初の研究計画では、蒋庄遺跡の整理済みの人骨資料の調査が完了した後、遺跡現地にて未整理の人骨資料を調査する予定であった。しかしながら、新型コロナウィルスの蔓延による渡航自粛要請によって、当面は海外にて活動できないことが想定されるため、これまで収集したデータの整理、分析に集中し、論文執筆を行う予定である。国内移動の自粛が解除された後、国内の研究機関が管理する人骨資料から比較データを収集したい。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルスの蔓延による渡航自粛要請によって、2020年3月に連携研究者らと予定していた海外調査を中止したため、次年度使用額が生じた。今年度、渡航自粛要請が解除されないようであれば、比較データを収集するために国内調査を集中的に行う予定である。また、研究成果を発信するためのツールとして、復顔を依頼し、その製作費用に充てたい。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] 南京博物院/上海博物館/浙江省文物考古研究所(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      南京博物院/上海博物館/浙江省文物考古研究所
  • [雑誌論文] 水田稲作と結核2020

    • 著者名/発表者名
      岡崎健治・高椋浩史・陳傑
    • 雑誌名

      河姆渡と良渚 中国 稲作文明の起源

      巻: - ページ: -

    • 国際共著
  • [雑誌論文] Paleopathological approach to early human adaptation for wet-rice agriculture: First case of Neolithic spinal tuberculosis at the Yangtze River Delta of China2019

    • 著者名/発表者名
      Okazaki, K., Takamuku, H., Yonemoto, S., Itahashi, Y., Gakuhari, T., Yoneda, M., Chen, J.
    • 雑誌名

      International Journal of Paleopathology

      巻: 24 ページ: 236-244

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.ijpp.2019.01.002

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 第三章 出土人骨研究2019

    • 著者名/発表者名
      岡崎健治・高椋浩史
    • 雑誌名

      馬家浜

      巻: - ページ: -

    • 国際共著
  • [学会発表] 人骨の形態からみたモンゴル先匈奴期の人々2020

    • 著者名/発表者名
      岡崎健治・米元史織・Amgalantugs Tsend・宮本一夫
    • 学会等名
      第21回北アジア調査研究報告会
  • [学会発表] 骨形態からみた長江デルタ地域の初期稲作農耕民2019

    • 著者名/発表者名
      岡崎健治
    • 学会等名
      第73回日本人類学会骨考古学分科会シンポジウム
  • [学会発表] 人骨の形態から知る初期稲作農耕民の姿2019

    • 著者名/発表者名
      岡崎健治
    • 学会等名
      第73回日本人類学会公開シンポジウム
    • 招待講演
  • [備考] 5000年前の初期稲作農耕民は結核症を患っていた

    • URL

      https://www.med.tottori-u.ac.jp/news/25402.html

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公開日: 2021-01-27  

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