研究課題/領域番号 |
18K06443
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
岡崎 健治 鳥取大学, 医学部, 助教 (10632937)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 初期稲作農耕民 / 新石器時代 / 中国 / 長江デルタ地域 / 蒋庄遺跡 / 同位体分析 / 歯冠形態 / 頭蓋形態 |
研究実績の概要 |
コロナ禍のため、2020年度の9月と3月に実施予定であった海外調査だけではなく、国内の研究機関への資料調査についても中止とした。ただ、本研究が主対象とした江蘇省蒋庄遺跡については、南京博物院江南工作所に運搬済みであった人骨資料は2018~2019年度に既に調査を完了していたため、その分析結果の整理と論文執筆に取り組んだ。 人骨コラーゲンを用いたC14年代測定の結果、埋葬人骨の年代は概ね2860-2480 cal BCEの範囲に集約したため、良渚文化期とした考古学的年代と合致した。人骨コラーゲンと歯冠エナメル質を用いた安定同位体分析の結果、これまで分析してきた上海市広富林や浙江省良渚遺跡群とは異なり、蒋庄集団では食性や出身地に大きな変異は見られなかった。全個体がC3植物おそらくイネを主食とし、移入者の存在も皆無であった。 歯冠の形態分析の結果は、長江デルタ地域の南北間で大きな差異が認められた。広富林集団の歯冠サイズは、渡来系弥生集団に迫るほど大きかったのに対し、蒋庄集団の歯冠サイズは、縄文集団や在地系弥生集団とほぼ同等な程に小さかった。さらに、蒋庄集団の歯冠形態は、サイズ因子を除去した結果、同地域のLongqiuzhuang集団(5000-3000 BCE)と初期王朝期(東周代~西漢代)の人々と共に他地域の集団と大きく異なり、独自の形質をもつことが示された。これらの結果をまとめ、学術書籍にて分担執筆の形で発表した。 頭蓋の形態分析については、蒋庄集団を含めることはできなかったものの、広富林や江蘇省Weidunなどの計測データを用いた。その結果、新石器時代の長江デルタ地域にはアワ・キビ農耕は伝播しなかったにも関わらず、この地域の稲作農耕集団は、アワ・キビ農耕集団からの遺伝的影響を強く受けていたことが示唆された。この結果をまとめた論文は、専門雑誌にて受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の世界的蔓延のため、2020年度は、資料調査によって分析データを追加することはできなかった。しかしながら、前年度までの調査によって得られていた分析データを整理、論文化することに集中できたため、研究成果の発表は順調に行われた。
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今後の研究の推進方策 |
国内移動が可能になれば、鳥取県埋蔵文化財センター、九州大学総合研究博物館、国立科学博物館などにて資料調査を開始し、比較データを収集する予定である。それが難しい場合は、これまでの資料調査で得られている分析データの中から、まだ手つかずの項目(e.g., 古病理)を整理し、論文化することに集中する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため資料調査を遂行することができず、出張旅費が未使用のまま残ってしまった。コロナ禍の状況が好転したならば、主に国内での長期の資料調査を行うことによって次年度使用額を使用したい。
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