研究課題/領域番号 |
18K06444
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
國松 豊 龍谷大学, 経営学部, 教授 (80243111)
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研究分担者 |
日下 宗一郎 東海大学, 海洋学部, 特任講師 (70721330)
西岡 佑一郎 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 主任研究員 (00722729)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヒト上科 / 中新世 / 東南アジア / オランウータン / オナガザル上科 / 古環境 / 哺乳類相 / 安定同位体分析 |
研究実績の概要 |
2019年度は、2020年2月に研究代表者の國松と研究分担者の西岡、日下の3名がタイへ渡航し、対応先であるナコンラチャシマ市にある東北タイ珪化木博物館において、同博物館に保管されている化石標本及び化石産地の調査を実施した。國松と西岡は、2018年度に同博物館を訪問して以降にナコンラチャシマ郊外のターチャン地域のサンドピットから新たに産出し、同博物館に収蔵された脊椎動物化石標本を整理し、現場で可能なレベルの同定ののちに標本登録作業をおこなった。これらの標本の計測や写真撮影、レプリカ作成のための型取りなどの作業を実施するとともに、博物館に収蔵されている従来の標本も含めて比較検討し、データを収集した。新たに産出した化石の整理過程で、中新世後期のものと思われるコロブス類の下顎片が見つかった。年代推定が正しいとすれば、旧世界ザルがユーラシア東部へ拡散していった比較的初期の化石ということになり、旧世界ザルのアフリカからユーラシアへの拡散過程の解明にナコンラチャシマ地域の化石産地が重要な情報をもたらす可能性を示唆するものである。日下は、前年度に引き続き、古環境復元のために、博物館所蔵の化石標本から安定同位体分析のためのサンプルを採集した。前年度に採取した安定同位体分析用のサンプルの予備的な解析の結果では、ほとんどのサンプルはC3植生を示すが、ごく一部にC4植生を示すものもあった。追加サンプルの分析により、予備的解析の結果をより確かなものにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タイ側共同研究者・研究機関とは良好な関係を維持しており、2018年度に引き続き、2019年度もタイ東北部ナコンラチャシマにおいて順調に調査を進めることができた。2018年度の調査以降、2019年度に東北タイ珪化木博物館を再訪問するまでの間にも、ナコンラチャシマ郊外の化石産地から新しい化石標本が産出し、同博物館に保管されており、今後も当分の間、継続的に化石産出が期待できる状況である。また、この間に収集された化石標本の中には、中新世後期の可能性のある旧世界ザル類の標本が含まれており、ナコンラチャシマ郊外の化石産地が旧世界ザルによるユーラシア東部への初期の拡散過程について重要な情報をもたらす可能性も見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の調査で中新世後期の可能性をもつ旧世界ザル化石が得られたため、今後はヒト上科とともにオナガザル上科のアフリカから東部ユーラシアへの拡散についても調査の展開を図りたい。2020年度もタイ東北部ナコンラチャシマ地域における調査を予定しているが、現在、世界的に新型コロナウイルスによる影響が広がっているため、年度内に海外調査が実施できるかどうか見通しが不透明な状況である。タイ側共同研究者とも連絡を取りつつ、情勢の推移を見守っていきたい。新型コロナウイルス問題が長期にわたって終息せず、年度内の海外渡航が不可能のままであった場合、やむをえないので2019年度までに収集したデータで一旦解析と取りまとめをおこない、新型コロナウイルス問題終息後の調査の再開を期して準備を進めていきたい。
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