研究課題
沖縄島における人類渡来最初期の年代を追求する目的で、沖縄県南城市サキタリ洞遺跡において更新世堆積層の発掘調査を実施した。最終年度には特に約3万年前の地層を掘削し、年代測定等の材料となる炭化物等を抽出、それらの年代測定を実施することで堆積層の高精度年代情報の取得に努めた。その結果として2016年に報告していた幼児部分骨が約3万年前と考えて間違いないことを再確認し、追加の人骨も得た。これらは、3万年前に沖縄島に人類が渡来していた確証となる。発掘に関連して堆積物の分析を進めたところ、約2万9千年前に堆積層が一時的に水没した可能性を示唆する複数の情報が得られ、旧石器人による洞窟利用と遺跡形成過程の解釈に関わる重要な知見を得た。また、約3万年前の地層から新たに動物遺骸を発掘し、その基礎整理を進めた結果、その中に絶滅シカ化石が含まれないことを確認した。沖縄島におけるシカ絶滅時期の特定は、旧石器人の渡来が在来生物にもたらす影響を検討するうえで重要な情報である。過去の調査では、近隣の八重瀬町港川遺跡では約2万年前の堆積層から絶滅シカ化石が出土したと報告されており、今回の成果はこれとは矛盾する一方、糸満市の真栄平鉱山第一裂罅の層序とは整合的である。結論を出すには調査事例が十分でないものの、この問題解決に必要不可欠となる確度の高い年代情報を今回のサキタリ洞調査で新たに追加できたことは、大きな前進である。この成果について学会発表を行った。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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