復顔法は身元不明の頭蓋骨が発見された際、歯科所見やDNAから身元が特定できない場合に生前の顔貌を推定する法人類学的技法である。 申請者はこれまで本技法の精度の向上を図る目的でX線写真を用いた日本人顔面の軟組織厚の平均値を報告してきた。本助成を受け研究期間全体を通して死後CT画像を用いた顔面と頭蓋骨の計測、解析を行った。これまで遺体からの計測は、解剖実習に用いられる防腐処置後のものであるため計測値は、硬直や脱水によって生体から得られた計測値とかけ離れたものになると報告されてきたが、今回の研究で計測をおこなった法医解剖前に撮影された死後CT画像からの計測値は、遺体の死後経過時間や計測部位等(中顔面以上)の限定はあるが概ね生体と同様の計測値が得られる事が明らかになった。またこれらのデータを用いることにより、申請者がこれまでX線写真をもちいた2次元での計測から3次元での計測が可能となり、死後CT画像を用いた顔面軟組織厚の計測を行い、最新の日本人顔面軟組織厚の平均値に関する研究を論文発表の形で報告した。 上述の研究結果およびこれと平行して、死後CT画像を用いた顔貌推定に関する研究を2項目行った。内訳は①梨状口形態からの鼻翼の推定方法の確立、②歯列からの口唇形態の推定方法の確立に関する研究である。①梨状口形態からの鼻翼の推定方法の確立に関しては、日本人の顔面における非対称性を認めるに至った。これまで復顔法にて当該の部位の推定を行う場合は左右の推定値は同一の値を用いてきたが、本研究により左右において異なる推定値を用いることで、より精度の高い推定が可能になる事が示唆された。本研究は2度の国内における学会発表を行った。国際誌に発表すべく論文を執筆中である。②歯列からの口唇形態の推定方法の確立に関する研究に関しては、サンプル数が一定数に達した時点で論文発表の予定である。
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