研究課題/領域番号 |
18K06448
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
清水 悠路 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員准教授 (40569068)
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研究分担者 |
前田 隆浩 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40284674)
山梨 啓友 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (60709864)
小屋松 淳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (90714212)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 器質的動脈硬化指標 / 機能的動脈硬化指標 / 歯周病 / 造血能 / 末梢血造血幹細胞 / HTLV-1感染 / 筋力 / 高齢者 |
研究実績の概要 |
本研究の主目的である「生活水準低下に及ぼす血管リモデリングネットワークを解明」を行う目的で、2018年度には、五島市健診受診者534名、及び佐々町健診受診者580名を対象に動脈硬化検診を実施した。 五島における動脈硬化検診では、血液サンプルを採取後、問診、血液検査、尿検査に加え、動脈硬化指標である心臓足首血管指数(CAVI)及び頸動脈内膜中膜肥厚(CIMT)、加齢性の筋力低下状況を把握する目的で、握力測定及び体成分分析、さらには歯科検診を実施した。また、採取した血液サンプルを使いHTLV-1感染の有無を判定した。過去の検診データとこれらの今回得たデータを突合させ、高齢者においてHTLV-1感染は歯周病の増悪因子となるが、その関係に血管修復能が影響し得ることが判明した。これは、我々の研究対象である血管リモデリングネットワークの一部の解明に繋がるものである。この得た結果に関しては、現在、国際誌に論文投稿中である。また他に、採取した血液サンプルを用いて五島での動脈硬化健診受診者の男性60-89歳の163名を対象にシスタチンCを測定。さらに、同対象者に対し、マルチサスペンションを用いて BMP及びアンギオポイエチン2の測定を行っており、得ることが出来たデータからクリーニングを行いデータベースへの入力作業を行っている。 佐々町における動脈硬化健診では、動脈硬化指標である頸動脈内膜中膜肥厚(CIMT)を測定し、既にデータクリーニング後、データベースに入力を行った。さらには過去データを用いて検討を行い、器質的動脈硬化指標であるCIMTと機能的動脈硬化指標であるCAVIとの関連に、腎機能や造血能が影響を及ぼす可能性があること。また、血管修復を直接つかさどる抹消血造血幹細胞は、器質的動脈硬化が形成されている状況下では消耗性に減少している可能性があることが判明し、国際誌において論文報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、生活水準低下に及ぼす血管リモデリングネットワークの解明が、主な研究目的である。しかしその主目的を達成するためにはまず、血管リモデリングネットワークの大枠の把握が必要である。 そこで現在あるデータを用いて検討を行った。結果としては、まず、器質的動脈硬化指標(CIMT)と機能的動脈硬化指標(CAVI)との関係に、血管修復を直接つかさどる末梢血造血幹細胞の数が影響を及ぼす事が判明した(Geriatr Gerontol Int.2019)。また、慢性腎臓病と動脈硬化ととの関連は多くの先行研究において報告されているが、器質的動脈硬化指標(CIMT)と慢性腎臓病の関係は、末梢血造血幹細胞が多いものでしか認めないことが判明(Atherosclerosis.2019)。これにより、器質的動脈硬化の形成には造血幹細胞が多い必要があることが示唆された。さらに、高血圧と器質的動脈硬化の間の関係においても、造血能が影響している可能性が示唆された(Clin Interv Aging.2019)。またさらに、器質的動脈硬化は強力な血管修復の結果形成されるが、この状況下では末梢血造血幹細胞は消耗性に減少することも判明した(Aging.2019)。これらの解析結果は、血管リモデリングネットワークの大枠の把握に有用な知見であり、既に国際誌で論文報告を行った。 またさらに我々は、高齢者において生活水準低下を来す因子として歯周病に焦点をあて考察。上記の血管リモデリングネットワークの構成因子の一つである造血能が、歯周病に影響を与える可能性を見出したため、現在、国際誌にて論文投稿中である。 これらの解析結果は、我々の現在行っている手法が、本研究の主目的を達成する方法として有効である可能性が高いことを示唆するものである。従って、現在の研究進捗状況は、当初の計画以上に伸展していると判断できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究目的である「生活水準低下に及ぼす血管リモデリングネットワークの解明」には、一般的な健診項目に加え、生活水準低下に関連する因子(筋力低下・筋量低下・歯周病・歯牙欠損・慢性腎臓病・低栄養など)の更なるデータ採取。及び、直接、血管内皮の障害程度を直接推測し得るアンギオポイエチン2、血管リモデリングネットワークの構成因子であり、骨髄の活動性を示唆し得るBMPの測定をさらに行い、研究対象者の数を増やす必要がある。 2019年度の五島における動脈硬化検診の受診予定者は、現在のところ1660人であり、佐々町では600人程度である。この健診受診者を対象に、2018年と同様に、身体測定、問診、器質的動脈硬化指標の測定、機能的動脈硬化指標の測定、歯科検診などを行い血液サンプルを採取・保管する。さらにはこの保管した血液サンプルを用いて、60-89歳の男性を対象に、アンギオポイエチン2およびBMPの測定を行う。 2019年も、2018年同様に得ることが出来たデータのクリーニング作業を行い、クリーニングが出来たデータから順次、データベースへ入力していく。データが一通り集積された段階において、このデータを用いての解析作業に入る。解析作業では、まず、血管内皮障害とその再生に関する血管リモデリングネットワークの関係を解明を目指し、さらにここで得た知見をもとに、血管リモデリングネットワークの生活水準低下要因への関わりの解明を目指す。 このような方法で得た新しい知見は、国内外の関連学会での発表はもとより、国際誌においての論文発表も目指す。
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