研究課題/領域番号 |
18K06449
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研究機関 | 三重県立看護大学 |
研究代表者 |
大西 範和 三重県立看護大学, 看護学部, 教授 (20176952)
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研究分担者 |
山根 基 愛知みずほ大学, 人間科学部, 講師 (50410634)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 冷え性 / 皮膚血流量 / 体温 / 皮膚温 / 二次元血流画像化装置 / レーザースペックルフローグラフ / サーモグラフ / 部位差 |
研究実績の概要 |
日本人女性に多い「冷え性」では、 環境温の低下などにより手足の皮膚血流量が著しく減少し、それが冷えの要因であるといわれている。また、末端や一部の指に部分的に冷えを感じる人も少なくなく、その部位は人によって様々である。しかし、皮膚血流は光ファイバー式レーザー血流計を用いてピンポイントで調べられることがほとんどで、血流と冷えの感覚や皮膚温の分布状態とを比較した研究は見当たらない。そこで本研究課題では、寒冷暴露時の足部の皮膚血流の変化を二次元血流画像化装置により画像として記録し、主観的な温度感覚やサーモグラフで記録した温度分布などと範囲・面積やその個人による違いを比較し、冷え性の有無との関係を調べ、「冷え性」を生む要因にアプローチすることを目的に研究を開始した。 平成30年度は、冷え性自覚者を含む若年成人女性を対象に、人工気候室を用いて、室温を32℃から1時間かけて20℃まで低下させる緩やかな寒冷曝露を行い、その間の足部の温度感覚、二次元血流画像化装置で測定した皮膚血流分布やサーモグラフで測定した皮膚温分布などを記録し、その相互関係について検討してきた。 その結果、室温が低下するとともに冷えを強く感じるようになったが、冷えの強さの自覚や分布の様子は個人によりかなり違いがあった。また、サーモグラフで測定した皮膚温は室温が下がるとともに低下したが、冷えの感覚の時間的変化とは必ずしも一致しなかった。二次元血流画像化装置により測定した皮膚血流は、サーモグラフで測定した皮膚の温度と分布状態が類似していたが、低下の仕方は両者で異なる傾向にあった。また、冷えの感覚は、サーモグラフで測定した皮膚の温度低下より、血流量の減少に平行して強くなる傾向が認められ、未だ十分な例数がなく結論的ではないが、周囲の寒さが緩やかに進む場合には、温度感覚、皮膚温と皮膚血流量の推移に違いが生じる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、冷え性自覚者を含む若年成人女性を対象に、人工気候室を用いて、室温を32℃から1時間かけて20℃まで低下させる緩やかな寒冷曝露を行い、その間の足部の温度感覚、皮膚血流量や体温を観察する実験をスタートした。 本格的な実験の実施に先立ち、以下の2項目をはじめ方法を充分に確認し、実験から得られる数値の精度や妥当性を高めた。 ①二次元血流画像化装置の測定精度や妥当性の検討、厳密な測定法の確立 ②二次元血流画像化装置による足部全体の血流分布とレーザードップラー血流計による血流量の測定、サーモグラフによる足部全体の温度分布とサーミスタ温度計による足先の皮膚温の測定、サーミスタ温度計による鼓膜温や前胸部、上腕部、大腿部、下腿部の皮膚温の測定、主観的温度感覚の申告について同時に測定する手技の確立 実験は、順調に進んでおり例数も増えつつある。研究の途上ではあるが、冷えの感覚が、サーモグラフで測定した皮膚の温度より血流量に平行して変化する傾向が認められるなど、新たな知見が得られつつあり、周囲の寒さが緩やかに進む場合には、この3者の進み具合に違いが生じる可能性があることから、そのメカニズムを追究し、冷え性に関係する生理学的な背景にアプローチできる期待が持たれている。得られた結果は、順次学術学会で報告している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在進行中の寒冷曝露実験をさらに進め、冷え性自覚者や非自覚者の例数を増やすとともに、特定の部分に冷えを感じる人に協力を依頼し、数的だけでなく質的にも対象の幅を広げ、冷えの感覚の部位による違いが、サーモグラフで測定した皮膚の温度分布や二次元血流画像化装置により測定した皮膚血流分布などとどのように関連するかを明らかにし、血管を支配する神経の分布や活動、温度受容器の位置などを考慮に入れながら、冷えの感覚に部位による違いを生む要因について追究していく。 さらに、次の段階として、音などの感覚刺激を加えた際の、皮膚血流量や皮膚温の変化を観察し、そのれらの部位による違いを調べるとともに、深部体温との関係から感覚刺激などで生じる血管収縮が、冷え性の有無で異なるか否かを検討し、冷え性の人の体温調節の特徴を調べる。令和元年7月には、Amsterdam で行われるInternational Conference on Environmental Ergonomics 2019においてそれまでの研究成果を報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は、物品費として二次元血流画像化装置(LSFG-PI-E、ソフトケア有限会社)の購入のため1,998,000円を支出し、その残金2,000円を次年度に使用することとした。令和元(平成31)年度には、二次元血流画像化装置で記録・保存されたレーザースペックル画像から、多様に値を読み取る等の高度な処理を行うためのオプション解析ソフトウエアを購入する計画であり、それの一部に当てる。
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