研究課題/領域番号 |
18K06457
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森澤 陽介 東北大学, 生命科学研究科, JSPS特別研究員(PD) (50772167)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グリア / 貪食 / プローブ / 神経回路再編 / シナプス再編 |
研究実績の概要 |
脳内情報処理の変化は、シナプス伝達効率の可塑的な変化によってもたらされる。しかしながら、その変化が長期的に脳内に定着するには、神経回路そのものの再編成が必須である。この過程は、正常時には学習・記憶の礎となるが、病態時には不適切な神経回路の形成を促し、病態の発現を引き起こすと考えられている。本研究では、正常・異常時におけるシナプス消失のメカニズムに着目し、神経回路再編の素過程の解明を目指している。
シナプス消失メカニズム解明のための蛍光プローブ発現マウスの作成 発達期におけるシナプス再編時、グリア細胞によるシナプス貪食・除去が重要な役割を果たすことが報告されている。しかしながら、成体で生じる正常・異常シナプス再編におけるグリア細胞の機能は明らかになっていない。我々は、哺乳細胞のLysosome中で分解されずらい外来性タンパク質Xを、神経細胞特異的に発現させることで、グリア細胞による貪食の可視化を試みた。Tet-offシステムで目的遺伝子発現を時期・細胞種特異的に制御可能なマウスを作出した。成体になった後に、神経細胞特異的に発現させたタンパク質Xが、グリア細胞内のLysosome中に多数観察されることが明らかになった。これらの結果から、発達期のみならずグリア細胞が恒常的に神経細胞のシナプスを貪食・除去し、神経回路再編を担っている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定であったtetO-トランスジェニックマウスの作出のみならず、神経細胞特異的プロモーターtTAラインとの掛け合わせを終え、さらに貪食可視化マウスとしての有用性を検証することができたため。これまで遺伝学的に発現させた貪食プローブは存在していない。神経科学領域のみならず、発生発達分野や免疫学分野への応用も期待されると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本マウスを用いて、学習・記憶課題や病態マウスとの掛け合わせ、傷害モデルの作出などを行う。これらの解析を通じて貪食プローブとしての有用性と新たな細胞分子メカニズムの発見を試みる。具体的には、運動学習によってシナプス数が半減するモデルを安定的に生産できるシステムを構築したため、当該神経細胞にタンパク質Xを選択的に発現させることでシナプスの貪食消去のメカニズム探索を行う。傷害モデルとしてはTBIを考えており、これまで報告されている免疫細胞以外でタンパク質Xの取り込み、除去の亢進が認められないか解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度にシステム構築のためにまとまった費用が必要になると判断し、出費をできるかぎり抑えた。前倒し請求と併用して、次年度使用予算を増やし、想定より早い進捗に合わせ実験システムの構築に努める予定である。
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