研究課題/領域番号 |
18K06460
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
岩倉 百合子 新潟大学, 脳研究所, 助教 (40452081)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 上皮成長因子 / コンドロイチン硫酸プロテオグリカン / ペリニューロナルネット / 大脳皮質 / GABA神経細胞 |
研究実績の概要 |
R2年度は、遺伝子改変マウスを用い、上皮成長因子(EGF)モデルマウス大脳皮質におけるPNN構成要素発現量の変化について以下のデータを得た。 EGFはGABA神経細胞の形態的、機能的発達の抑制と、それらに伴う発達終了後(成体時期)の行動変化を引き起こす。前年度までの研究結果より、上皮成長因子(EGF)過剰発現(EGF-Tg)マウス(成体)の大脳皮質において、GABA神経細胞周囲に形成されるレクチン(WFA)結合性の ペリニューロナルネット(PNN)陽性細胞数の低下が観察された。また、PNNの主要な構成成分であるコンドロイチンプロテオグ リカン(CSPG)の発現量を解析すると、野生型マウスと比較して、C4S, C6Sともに有意な減少を認めている。今回、2週齢、4週齢、8週齢のEGF-Tgマウスの大脳皮質におけるWFA結合性のCS量をドットブロット法で比較したところ、4週齢では野生型に対する相対的な減少が有意に見られた。さらに、CSPG同様にPNNの構成成分の一つであるヒアルロン酸結合蛋白(HABP)についても、同様にEGF-Tgマウスの大脳皮質で減少していた。これらのことから、EGFは、これらの動物の大脳皮質の発達過程において、CSPG等の集積減少とPNN形成の低下をもたらすことが示唆された。所属研究室のこれまでの研究では、EGF投与動物及びEGF過剰発現動物では、統合失調症と関連するような認知・行動異常があることも明らかになっている。EGFによるPNNs形成の低下は、このようなEGFによるGABA神経細胞の形態的・機能的発達抑制に関与している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
R2年度は、春頃に所属研究室の建物移転を予定していたが、途中コロナ禍の影響で12月以降まで延期になった。また、同時期に子供の学校でも登校中止期間があったため、その期間中はほぼリモートワークとなり、当初の予定通りに研究を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果より、EGFはPNNsやその構成要素であるCSPGなどの集積に影響を与えること、成体(個体)においてはそういったPNNsの形成低下がEGFによるGABA神経細胞発達抑制に関連する可能性があることが明らかになった。R3年度は、EGF過剰発現動物におけるアグリカンなどのコア蛋白の変動を測定し、これまでの結果と合わせて論文として報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:「現在までの進捗状況」欄にも記入した通り、コロナ禍等に伴う進捗の大幅な遅れがあった。 使用計画:R2年度の未使用額については、当初の予定通り、EGF-Tgマウス組織や初代培養系を用いた生化学的解析にかかる物品費として引き続き使用する。また、R3年度内の学会発表にかかる費用、および論文二価かるの英文校正と掲載費用を旅費や謝金等として使用する。
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