研究課題/領域番号 |
18K06463
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
宝田 美佳 金沢大学, 医学系, 助教 (40565412)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 小胞体ストレス / 緑内障 / ミュラーグリア / ATF6 / 網膜 |
研究実績の概要 |
緑内障は、網膜神経節細胞(RGC)の神経変性により視野異常・欠損をきたす疾患である。眼圧を低下させる治療が行われているが患者の多くが正常眼圧であり、その病態制御機構には不明な点が多い。近年では、緑内障は神経変性疾患の一つであると考えられており、小胞体ストレスの関与が示唆されている。小胞体ストレスへの応答としてATF6, PERK, IRE1を介した3つの主要経路が存在する。本研究では特にATF6経路に注目し、緑内障病態が小胞体ストレス応答により制御される可能性とそのメカニズムを明らかにする。本年度はin vivoの解析を主として行った。緑内障病態モデルとして視神経傷害モデルを用い、RGCの生存率を組織学的に評価するとともに、網膜組織における種々の分子の遺伝子・タンパク質発現の解析を行った。視神経傷害後、網膜においてATF6の下流遺伝子の発現が増加した。ATF6aの全身欠損は視神経障害後のRGC生存率の低下させた。RGC生存に重要な役割を果たす、ミュラーグリアの活性化マーカーおよび種々の神経栄養因子の発現を解析した。その結果、視神経傷害後に誘導されるグリア活性化マーカーおよび一部の神経栄養因子の発現が、ATF6a全身欠損マウスにおいて低下することが明らかとなった。また、グリア細胞特異的ATF6a欠損マウスにおいても同様にRGC生存率の低下、グリア活性化の減弱が認められた。これらの結果より、緑内障の病態であるRGCの変性過程において、ミュラーグリアの小胞体ストレス応答が重要な役割を果たす可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、視神経傷害ATF6a全身欠損マウスの組織学的解析から、RGC変性過程におけるATF6aの重要性を見出し、その責任細胞としてのグリア細胞の可能性をグリア特異的ATF6a欠損マウスの解析から明らかにすることができた。さらに、ATF6aの標的分子として特定の神経保護因子を見出している。これらから、緑内障病態における小胞体ストレス応答ATF6経路の重要性を示すことができた。また、in vivoの解析に加え、in vitroのミュラーグリアの培養系についても解析を進めている。計画していた課題を順調に達成できているため、上記の評価とする。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、小胞体ストレス応答がどのようにグリア細胞に作用しRGCの生存に寄与するのか、そのメカニズムをin vitroの系を用いて明らかにしていく。その上で、小胞体ストレス応答の標的分子や、小胞体ストレスを軽減する化合物がRGCの生存を促進できるのかをin vivoの視神経傷害モデルで検証する。これにより、緑内障病態における小胞体ストレス応答の重要性とその制御機構を明らかとする。
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