研究課題
緑内障は、網膜神経節細胞(RGC)の神経変性により視野異常・欠損をきたす疾患であり、近年は神経変性疾患の一つと考えられているがその病態制御機構には未だ不明な点が多い。神経変性疾患において小胞体ストレス応答の重要性が報告されており、その主要経路の1つであるATF6経路に注目し、緑内障病態における小胞体ストレス応答の重要性とそのメカニズムの解明に取り組んだ。本年度は、病態における小胞体ストレス応答の寄与はいずれの細胞において大きいのかという点に重点を置き解析を行った。神経細胞特異的なATF6a欠損マウスおよび傷害神経特異的なATF6a欠損マウスを作成した。まず、これらの神経細胞特異的な遺伝子組換えの効率について赤色蛍光タンパク質を発現するマウスを用いて検証した。神経細胞特異的な遺伝子組換えは、RGCだけでなく内顆粒層の神経細胞も標的されるもののRGCにおいて高い組換え効率を示した。傷害神経特異的な遺伝子組換えは、視神経傷害後のRGCに特異的に赤色蛍光タンパク質の発現を誘導した。これらの神経細胞特異的ATF6a欠損マウスを用いて視神経傷害後のRGC生存率を検証した。ATF6a全身欠損マウスやグリア細胞特異的ATF6a欠損マウスが野生型マウスと比べて有意な生存率の低下を示したのとは対照的に、これらの神経細胞特異的ATF6a欠損マウスは野生型と比べて生存率の有意な低下を示さなかった。以上の結果から、視神経の傷害における小胞体ストレス応答ATF6経路は、神経細胞よりはむしろグリア細胞において重要な役割を果たし傷害神経細胞の保護に寄与することが示唆される。本成果は、緑内障病態におけるグリア細胞の重要性を示し病態の分子基盤の一端を明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Anatomical Science International
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