研究課題/領域番号 |
18K06471
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
浜 千尋 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (50238052)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シナプス / シナプス間隙 / Hig / Hasp / アセチルコリン受容体 / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
ショウジョウバエ中枢神経系におけるコリン作動性シナプスのシナプス間隙には、共に分泌性のタンパク質であるHigとHaspが存在している。Higのシナプス間隙への局在にはHaspとnAChRサブユニットDalpha5とDalpha7が必要であり、その中でもHaspが欠損するとHigはシナプス間隙にほとんど検出できなくなる。ところが、Higが欠損してもHaspの局在には影響がない。したがって、Haspの局在化機構には、今までに同定されていないタンパク質が関わっていることになる。Haspと免疫沈降実験により共沈降したタンパク質の分画をショットガン法により質量分析したところ(名古屋大学、貝淵研究室との共同研究)、CG42613およびNeurexin-1という膜タンパク質が同定された。現在、CG42613について解析を進めており、このタンパク質をコードする遺伝子の欠失変異の分離に成功している。また、このタンパク質に対するポリクローナル抗体を作成して免疫染色を行なったところ、ショウショウバエの脳のシナプス領域を特異的に染色することを確認している。この抗体を使ってCG42613の欠失変異を染色すると、そのシグナルは完全に消失することから、分離した欠失変異はタンパク質を全く作らない変異であることが判明した。また、この変異体においてはHaspのシナプス局在量が減少するという結果が得られた。 CG42613タンパク質は、ニューロンだけでなくグリアで発現しているという報告があり、どの細胞での発現がHaspの局在化を制御しているのか明らかにしていく必要がある。また、シナプスにおける局在部位を、Hig、Haspなどとの相対的関係において超解像顕微鏡を用いて今後調べていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CG42613抗体の作成および作成した抗体の評価に予想を超えて時間がかかった。また、CG42613遺伝子の機能解析のために分離した欠失変異を用いた解析において、脳の免疫組織染色とウエスタンブロッティングとの間で首尾一貫した結果が得られず、今後の研究を進める上での基礎を固めることに手間取っている。さらに、新型コロナウイルスの影響は研究だけでなく教育にも負担が増大し、そのことが研究時間を圧迫していることも否定できない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度が最終年度であるため、遺伝学、生化学、分子遺伝学的解析および超解像画像の解析を通して、シナプス間隙コンパートメントの形成機構についての一定の知見を提出したい。そのために、CG42613タンパク質の発現細胞種の同定、CG42613とHigとHaspタンパク質のシナプス間隙における相対的位置関係の解明を行い、またその3種のタンパク質が互いに与える影響を免疫組織学的、生化学的に詳細に解析し、シナプス間隙コンパートメントを構築する機構についての理解を得たい。
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次年度使用額が生じた理由 |
シナプス間隙コンパートメントは本研究室で新しく見出された知見であり、その形成機構と意義について理解を深め、シナプスの新しい像を構築して研究をさらに発展させる必要があるが、新型コロナウイルスの影響もあり、研究の進展が遅くなっている。次年度では、以上の問題にアプローチするために、高解像度顕微鏡の一時使用などを含め、残りの予算を有効に用いるとともに、論文発表のための資金としたい。
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