本年度は、昨年度に引き続き神経細胞の軸索前終末におけるエンドソームSNAREタンパク質の1つであるSyntaxin-7を含む小胞の解析を行った。 海馬ニューロンのシナプス前終末において内在性Syntaxin-7の局在を共焦点顕微鏡で観察した結果、シナプス小胞マーカーであるSynaptophysinとの部分的な共局在が観察された。一方でアクティブゾーンマーカーであるBassoonとの共局在があまり観察されなかった。さらに電子顕微鏡による観察の結果、Syntaxin-7を含む小胞はSynaptophysinに比べてアクティブゾーンから離れた位置に分布していることを共同研究により明らかにした。 また、これまでにCalyx of HeldシナプスではCa2+依存的なシナプス小胞の即時放出可能プールへの補充にカルモジュリンの関与が報告されている。そこで海馬ニューロンのライブイメージングで観察されている高頻度刺激依存的なシナプス小胞の補充におけるカルモジュリンの関与について検討した。その結果、カルモジュリン阻害ペプチドを海馬神経細胞に発現させたところ、低頻度刺激に比べて高頻度刺激の際に起こるシナプス小胞の補充が有意に遅くなっていることを明らかにした。またSyntaxin-7を含む小胞もカルモジュリン阻害ペプチドの発現により高頻度刺激依存的な補充に遅れが生じていた。 以上の今年度の結果にこれまでの結果を加えると、海馬ニューロンにおいて高頻度刺激により優先的に補充されるSyntaxin-7を含むシナプス小胞群は、カルモジュリンとアクチン重合により制御されていることが示された。
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