研究課題/領域番号 |
18K06480
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
本多 敦子 新潟大学, 医歯学系, 特任助教 (40467072)
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研究分担者 |
伊藤 泰行 新潟大学, 医歯学系, 助教 (70710573)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 軸索形成 / 軸索再生 / M6a / 脂質ラフト / 神経損傷 / シグナル伝達 / EMARS標識 / 神経極性 |
研究実績の概要 |
本研究は、M6aによる「脂質ラフトを介したシグナル伝達」の活性化が、軸索形成や再生のシグナル伝達を制御するという申請者の仮説から、軸索形成・再生過程の神経細胞でM6aにより集積される脂質ラフトのシグナル分子群を網羅的に同定し、その分子間相互作用と意義を解明することを目的とし、本年度では以下の研究を遂行した。 1)軸索形成過程の分子間相互作用の同定 胎仔マウスの大脳皮質神経細胞の分散培養を用いて、神経軸索発生過程におけるM6aの相互作用分子の同定を行なった。生きた大脳皮質神経細胞においてM6a認識抗体を用いてM6a相互作用分子のEMARS(Enzyme-Mediated Activation of Radical Sources method) 標識を行なった。標識された分子群の質量分析を行ない、これまでに細胞外シグナル受容体、GPIアンカー型受容体、プロテアソーム、エンドサイトーシス関連分子などを検出している。 2)軸索再生過程の分子間相互作用の同定 成熟マウスの末梢感覚神経細胞である脊髄後根神経節 (DRG) 神経の分散培養細胞を用いて、神経軸索再生過程におけるM6aによる分子間相互作用を調べた。これまでM6aは中枢神経に多く発現するが末梢神経では殆ど発現しないと報告されていたが、本研究で分散培養したDRG神経細胞におけるM6a抗体による免疫染色が確認された。又、これと一致して、坐骨神経損傷後の成熟マウスにおいて、損傷後の再生過程の軸索にもM6a抗体の染色が認められた。野生型、M6aノックアウト成熟マウスのDRG分散培養神経細胞の軸索伸長速度が、野生型よりもM6aノックアウト成熟マウスが低いことからも、M6a発現の軸索再生過程への関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究目的のうちの一つ「軸索形成過程におけるM6a相互作用分子の網羅的同定」の解析法として、胎仔マウス大脳皮質神経細胞におけるM6a抗体によりEMARS標識した M6a相互作用分子群の質量分析に成功している。また、もう一つの「軸索再生過程におけるM6a相互作用分子の網羅的同定」におけるEMARS標識およびその質量分析に、成熟マウスのDRG神経の分散培養細胞が適応することを確認しており、軸索再生過程におけるM6a発現の有用性も見出した。
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今後の研究の推進方策 |
軸索形成・再生各過程におけるM6a抗体によるEMARS標識分子群の、質量分析結果の類似点や相違点を比較検討し、各過程に関与するM6a相互分子群を同定する。同定した分子とM6aとの相互作用を生化学的に解析するため、免疫沈降による共沈実験や、脂質ラフト膜画分における分布様式、リコンビナントタンパク質による結合様式解析などを行なう。更に形態学な解析として各過程の神経細胞において、同定分子群とM6aや脂質ラフトプローブとの共局在性を明らかにし、最終的に相互作用が認められた分子は、神経細胞における発現や機能の抑制による阻害実験を行い、分子間相互作用の軸索形成・再生過程における生理的役割を明らかにする予定である。
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