研究課題
昨年度、ミクログリアによる緑内障発症への寄与を解明するために、ミクログリアの生存・維持に必須のColony Stimulating Factor 1(CSF1)シグナルに着目し、その受容体アンタゴニストを用いて検討を進めてきた。緑内障モデルマウスにおいて、加齢組織では種々の細胞老化関連遺伝子の発現が上昇していたが、ミクログリアを除去すると細胞老化関連遺伝子の増加を抑制できた。ミクログリアの加齢に伴う機能異常は、CSF1Rアンタゴニストによる除去後の自発的回復によってリセットされる(ミクログリアリセット)。また、ミクログリアはアストロサイトの性質を制御する事によって神経変性に寄与する事が我々や他のグループから報告されており(Shinozaki et al. Cell Rep 2017; Liddelow et al. Nature 2017)、この可能性を検討するため、本年はミクログリアのリセットを検討した。ミクログリアリセットはCSF1Rアンタゴニスト(PLX5622)によるミクログリア除去後に生じる自発的な回復で誘導される(Elmore et al. Aging Cell 2018)。ミクログリアリセットはアストロサイトの幼弱期に高発現する遺伝子群の発現を著しく上昇させた事から、ミクログリアの性質がアストロサイトの細胞老化を制御する重要な要素である可能性が明らかとなった。また、In vitroの実験では逆に、培養アストロサイト上にミクログリアを播種するとミクログリアの細胞老化が著しく上昇する現象を見出し、ミクログリア-アストロサイト双方向性制御機構の存在を発見した。また、非侵襲的にミクログリアを網膜内へ移植する方法論も確立し、緑内障の発症・進行が正常ミクログリアの細胞移植によって抑制できるかを検証するための実験条件を整えることができた。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
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