研究課題/領域番号 |
18K06485
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
佐貫 理佳子 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 助教 (50607471)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 外傷性脳損傷 / 免疫応答 / 神経保護 / 老化 / 神経変性 / ミノサイクリン / ショウジョウバエ / 動物実験代替 |
研究実績の概要 |
外傷性脳損傷(TBI)による脳損傷は外部からの衝撃によって直接引き起こされる一次性脳損傷と、経時的変化に伴い出現する二次性脳損傷による変性に大別される。二次性脳損傷によって引き起こされる様々な障害は加齢と無関係ではないことが知られており、実際に、TBIによる死亡率は35歳以上で高くなることが報告されている。 2018年度はショウジョウバエを用いたTBIのモデルを構築し、若年の個体と比べて老化したショウジョウバエの死亡率が高くなることを突き止めた。また、TBIを負った老化したショウジョウバエ(TBI-Aged)では、TBIを負った若いショウジョウバエ(TBI-young)と比べると、アポトーシス細胞が多く、神経変性の度合いが大きいことが明らかとなった。さらに、TBI-youngに比べて、TBI-Agedでは脳損傷後の免疫反応が非常に高く活性化されることを見出した。この免疫反応の活性化は損傷部位(頭部)にとどまらず、全身に広がることも明らかにし、老化個体における脳の堅牢性低下の原因が過剰な免疫反応にあることを示唆した。 ミノサイクリンは外傷性脳損傷などに有効な神経保護作用を有することが、ラットやマウスなどの動物モデルを用いた研究で示されている。しかし、ミノサイクリンをはじめとする神経保護薬は、実際の臨床試験で神経変性疾患患者に有効な結果を示さない。一般的に、使用されている動物モデルは若い。しかし、神経変性疾患の多くが晩年に発症し、神経保護薬が必要な患者の多くは老化している。この差に着目し、ミノサイクリンの効果についてショウジョウバエモデルを用いて検証した。その結果、ミノサイクリンはTBI-youngは有効であったが、TBI-Agedには効果を示さない事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
若い個体と老化した個体では、脳障害時の免疫反応が違うことに加え、神経保護薬の有効性の差についても明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
神経保護薬の効果の違いについて、さらに深く明らかにするとともに、哺乳動物ではどのようになるのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シーケンサーによる解析を次年度に実施するため
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