本研究では、マウスの1次体性感覚野におけるパルブアルブミン陽性GABA作動性ニューロン(以下PVニューロン)について、研究代表者がこれまでに明らかにした所見である、4種類のサブタイプに対する、視床―皮質間入力の分布パターンを形態学的手法を用いて解析を試みたものである。 具体的には、視床―皮質間入力について順行性のトレーサーをマウスの視床後内側腹側核(以下VPM核)に微量注入した後で、灌流固定を施した脳組織標本を作製し、PVニューロンを蛍光免疫染色に併せて、注入したトレーサーも蛍光標識した。この標本を共焦点レーザー顕微鏡を用いたシリアルセクショニングを行い、画像解析ソフトNeurolucidaを用いた3次元再構築により、PVニューロンへの視床―皮質間入力の分布パターンを観察した。 この解析を行うに際して、共焦点レーザー顕微鏡で観察される、視床―皮質間入力の神経終末とPVニューロンとの接触部におけるシナプス結合形成の確率を、共焦点レーザー顕微鏡観察で用いた組織切片を電子顕微鏡観察のために再度染色を行い、超薄切片を作成して電子染色を行った。共焦点レーザー顕微鏡で観察したPVニューロンの細胞体上に付着する視床―皮質間入力の83%(6個中5個)、樹状突起上では 75%(8個中6個)の確率でシナプス形成を確認することができた。 この結果をうけてNeurolucidaを用いた3次元再構築を行ったところ、1次体性感覚野に投射している視床―皮質間入力のうち、13本の軸索が複数のPVニューロンの細胞体/樹状突起への付着を確認した。前述したPVニューロンのサブタイプと視床-皮質間入力を比較した結果、視床―皮質間入力はPVニューロンのサブタイプに依存していないことが分かった。
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