研究課題/領域番号 |
18K06491
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
秋山 博紀 早稲田大学, 人間科学学術院, その他(招聘研究員) (40568854)
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研究分担者 |
榊原 伸一 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (70337369)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | SUMO化 / SENP5 / 神経発生 / 突起伸長 |
研究実績の概要 |
SUMO化はタンパク質機能を制御する可逆的な翻訳後修飾の一種であり,がんや神経変性疾患などとの関連も指摘され,注目を集めている。しかし,神経系発生過程におけるSUMO化の機能の詳細は不明である。我々は,新規に同定したSENP5のペプチダーゼ活性欠失型アイソフォームが脱SUMO化を阻害することを見出した。神経突起発達が盛んな胎生後期の脳には,従来型・活性欠失型双方のSENP5が発現しており,このふたつのアイソフォームによる拮抗的SUMO化調節によって突起発達が制御される可能性がある。本研究課題では,この新規SUMO化調節を介した神経突起発達制御機構の詳細解明を目指しており,今年度は,SENP5の標的タンパク質の同定を目指した。これに加え,従来型・活性欠失型SENP5のマウス大脳皮質発生への影響を解析した。 ミトコンドリアの分裂に必要なDrp-1はSENP5依存的なSUMO化状態の調節により安定性が変化することが知られている。Drp-1のSUMO化状態が従来型・活性欠失型SENP5により拮抗的に制御される可能性を検討するため,免疫沈降およびWestern blottingを行ったものの,それを示す実験結果は得られなかった。従来型・活性欠失型SENP5のマウス大脳皮質発生への影響を解析するため,E14.5のマウス胎仔にin utero electroporationを適用しSENP5 shRNAを導入した後,E17に脳切片を作成した。結果,SENP5のKDは皮質発生を遅延させることが明らかとなった。同様の手法により従来型・活性欠失型SENP5を導入したところ,従来型SENP5の強制発現によって皮質発生の遅延が確認された。これらの結果から,SENP5によるSUMO化制御が大脳皮質発生に重要な役割を果たすことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定通り,SENP5の大脳皮質発生への影響を解析し,SENP5が正常な発生に必要な分子であることを明らかにした。しかし,SENP5依存的なSUMO化調節を受け,大脳皮質発生および神経突起発達を制御する分子の同定には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
SENP5の標的タンパク質のうち,神経突起発達・大脳皮質発生に寄与するものの同定を目指す。昨年度は従来型・活性欠失型SENP5によるDrp-1のSUMO化状態制御を検出する実験系を確立できなかった。実験系に改良を加え,これを検出可能かどうか検討する。また,すでにSENP5によるSUMO化状態の制御をうけることが知られているNucleophosminを新たな標的候補として解析を進める。Nucleophosminはリボソーム生合成に関わっており,様々なタンパク質の翻訳に影響を与えることが予想されるため,神経突起発達や大脳皮質発生に寄与している可能性は高い。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,SENP5依存的なSUMO化調節を受け,大脳皮質発生および神経突起発達を制御する分子の同定をひとつの目標としていたが,これに至っていない。候補分子のSENP5によるSUMO化制御が確認された後,大脳皮質発生や神経突起発達を制御するメカニズムの詳細を明らかにする実験を計画していたが,これら一連の実験が実施できていないため,次年度使用額が生じた。これらの費用は計画通り,候補分子のSUMO化制御の確認および皮質発生・突起発達の制御メカニズム解明のための実験に使用する予定である。
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