研究課題/領域番号 |
18K06492
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
井端 啓二 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (30462659)
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研究分担者 |
幸田 和久 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (40334388)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 小脳 / シナプス形成 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、小脳平行線維-プルキンエ細胞シナプスの形成および維持に重要な働きをするCbln1が、デルタ型グルタミン酸受容体(GluD2)に結合することによってどの様にシナプス後部を成熟させLTDを可能とするかについての分子機構を、免疫染色法およびライブイメージング法などで明らかにすることである。2019年度はGluD2とシナプス後部の成熟度合いのマーカーとしてGluA2とを同時にタイムラプスイメージングで観察した。緑と赤色それぞれのpH依存性蛍光タンパク質を用いてgreen-GluA2およびred-GluD2を用いた。またプルキンエ細胞の樹状突起を観察するために近赤外光を発する蛍光タンパク質を用いた。これらの遺伝子をCbln1-KOマウス由来のプルキンエ細胞で発現させ、精製Cbln1を添加しながら30分間のタイムラプスイメージングを行った。その結果、昨年度の報告書と同様にred-GluD2の局在が大きく変化するのが観察された。一方green-GluA2の局在にはあまり大きく変化が見られなかった。これらの結果から、Cbln1によって引き起こされるシナプス後部の成熟過程では、GluD2の局在変化が起こった後にGluA2の集積が起こると予想された。続いて野生型マウスの小脳初代培養系で、green-GluA2を観察することでLTDを可視化出来るか検討した。LTD刺激として高濃度塩化カリウム-グルタミン酸の混合液を用いたところ、樹状突起でgreen-GluA2の輝度の低下が確認出来た。よってCbln1添加前後のGluD2、GluA2およびスパインの動態をシナプス成熟過程およびLTD時に観察可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イメージングのためのコンストラクトやLTDの可視化等のセットアップはほぼ出来上がったが、トランスジェニックマウスの作製には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度はGluD2、GluA2およびスパインの動態を野生型と変異を入れたCbln1を添加することでより詳細に解析する。また、GluD2とGluA2の変異型や、GluD2の下流の分子であるPTPMEGに関しても遺伝子発現プラスミドは構築済みであるため実験および解析を行う。さらに、神経活動依存的に分泌されるCbln1のシナプス後部への効果を検討する。2019年度の実験により、野生型マウスの小脳初代培養系で高濃度塩化カリウム-グルタミン酸処理を行うとプルキンエ細胞の表面のGluA2量の低下が確認されたので、LTDが起こらない条件である高塩化カリウム処理のみ、またはCbln1-KOマウスの小脳初代培養系でGluA2量の変化を確認する。これらの実験によって神経活動依存的に分泌されるCbln1と、LTD刺激によって分泌されるCbln1の機能的な差異を明らかにする。本研究では未成熟のシナプスとして、Cbln1-KOマウスを用いているが、未成熟から成熟シナプスへの過程を観察する。そのためCbln1添加からの時間経過によってGluD2とGluA2のLTD刺激への反応に違いがあるかを調べる。また、プレシナプスのタンパク質に蛍光タンパク質を繋げた分子の観察も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加のための旅費は学内補助で支払ったため、旅費を次年度の物品購入用に繰り越した。
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