1.ショウジョウバエ幼虫の温度走性に寄与する脂質代謝遺伝子を検索し、モノアシルグリセロール(MAG)から不飽和脂肪酸を遊離するMAGリパーゼ遺伝子、および不飽和脂肪酸をMAGやジアシルグリセロール(DAG)に付加するトランスフェラーゼ遺伝子の変異体が、コントロールより低温域に分布することを見つけた。これらの遺伝子が感覚神経に発現すること、RNA干渉法による神経特異的なノックダウンにより低温集積の表現型が再現されることを確認した。この成果を2020年度生理学会にて発表した。 2.ショウジョウバエ幼虫の温度走性に関与する脂質関連遺伝子を網羅的に検索するため、特定の感覚ニューロンを単離回収し、RNAseq解析を実施した。その結果、感覚神経に発現の多い約60の脂質関連遺伝子を見いだした。RNA干渉法による神経特異的なノックダウンによる機能解析から、エーテル脂質産生に関わる遺伝子が温度嗜好性を高温忌避に関わることを見いだし、その成果を2020年度生理学会にて発表した。 3.ショウジョウバエ成虫の光応答においてTRPチャネルの活性化に関わる脂質を同定するため、単離した複眼を用いた包括的脂質解析を行い、光刺激による内因性カンナビノイドなど複数の脂質の増加を明らかにした。これらの脂質はTRPチャネルやそれを発現する視細胞を活性化することを確認し、その成果を論文として投稿し、現在リバイス中である。 4.味覚受容への温度の作用を調べるため、ショウジョウバエの味覚神経での温度制御メカニズムを解析した。その結果、苦味受容神経と機械刺激受容神経が低温で活性化し、甘味受容神経の活性を抑制することを明らかにした。このとき、苦味受容神経にはロドプシン6および脂質代謝酵素PLC21Cが発現し、低温受容と甘味受容神経の抑制に働くことを突き止めた。この成果を論文としてCurrent Biologyに発表した。
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